- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道函館市
- 広報紙名 : 市政はこだて 令和7年12月号
■谷地頭町会の取組紹介 スマホの向こうに、安心が見えた日。
谷地頭町会が挑んだ、デジタルでつながる避難訓練。
災害が起きたとき、避難所にいる人も、自宅にとどまる人もいる。
谷地頭町会では、市公式LINEを使って、デジタル避難訓練の実証試験を実施。
避難所に来られない人の声をスマホで吸い上げ、避難所に来た人は、その場で「到着を伝えることができる」仕組みが機能するかを検証しました。
◇谷地頭町会が挑んだ新しいカタチの避難訓練
「避難訓練」と聞くと、少し堅い印象を受ける人もいるかもしれませんが、今年の谷地頭町会の訓練は一味違いました。函館市と協働し、市公式LINEを活用した「デジタル避難訓練」として実施しました。避難所では、掲示された二次元コードをスマートフォンで読み取るだけで受付が完了。訓練ではダミーデータを使いましたが、氏名のふりがなと生年月日を入力すると住所などが自動的に反映され、高齢者でも迷わず操作できるよう設計されていました。
参加した住民からは「思ったより簡単だった」「デジタルでも人の温かさを感じられた」といった声が寄せられました。
◇避難所外避難者を可視化 共助モデルの検証
今回の訓練では、避難所に来られない在宅避難者や車中泊避難者も対象としました。町民はLINE上で現在地や「食料が足りない」「送迎が必要」といった支援ニーズを申告でき、その情報が地図上に即時反映されました。
移動が難しい高齢者などからの送迎要請を受け付け、自主防災組織が地図情報をもとに搬送支援を行いました。これにより、取り残されやすい避難所外避難者に対しても、住民同士が手を取り合うことできめ細やかな支援につなげることができました。助けを求める人と助けに行ける人がデジタルでつながり、新しい共助のカタチを検証しました。
◇人をつなぐデジタル 地域を変える第一歩
谷地頭町会会長 伊豆さん
谷地頭町会の避難訓練は、最初からデジタルを使おうと決まっていたわけではありません。「坂道が多いこの地域で、どう避難すればいいのか」「避難所に来られない人をどう支えるのか」そんな住民の声が出発点でした。話し合いを重ねる中で市企画部の地域デジタル課と出会い、町会と行政が一緒になり、市公式LINEを活用した新たな避難訓練の提案がありました。
役員会では「スマートフォンが苦手な人でも使える仕組みにしたい」と意見を出し合い、地域デジタル課がLINE上に機能を実装しました。そんな試行錯誤を繰り返しながら、「誰にでも使えるやさしいデジタル」という考え方が少しずつ形になっていきました。
訓練当日には、子どもから高齢者まで多くの住民が参加しました。「これなら自分たちでもできる」「デジタルって便利なんだね」という声が上がり、参加者の表情には安心と達成感が広がっていました。
やってみて感じたのは、デジタルは人を遠ざけるものではなく、人をつなぐ道具だということです。そして、地域と行政が力を合わせれば、どんなことでも始められるんだと実感しました
◇自分たちのまちは自分たちで守る
函館市防災士会 谷地頭町会副会長 鈴木さん
私自身も谷地頭町会の一員として今回の訓練に関わりましたが、町民同士が声をかけ合い、主体的に動く姿にとても心強さを感じました。特に、避難所に行かない方への共助の仕組みづくりは、私たちにとって新しい挑戦でした。デジタルの力を取り入れることで新しい共助のカタチが少しずつ見えてきたと思います。
一方で、課題もまだ多くあります。今回のように実際の災害時に物資を届けようとすると、人員の確保など現実的な難しさも残っています。そうした課題を整理しながら、今後は地域と行政が協力し、実際に運用できる仕組みへと磨いていきたいと考えています。
これからも地域の仲間として、「自分たちのまちは自分たちで守る」という思いを大切にしながら活動を続けていきたいと思います。今回の訓練は、その未来への一歩となる、とても良い機会になりました。
