- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道北広島市
- 広報紙名 : 広報北広島 2025年12月1日号
●食品加工、土壌微生物の力を活用した土作りの専門家
・小野 武二三(おの・たけふみ)さん
西の里北在住。元静内農業高校校長。退職後も新ひだか町などで地域の特産品開発に携わったほか、肥料の商標登録を取得するなど多岐にわたって活躍。令和7年秋の叙勲では、瑞宝小綬章を受章した。
◆農業従事者が夢を抱ける社会に
◇地域には宝物が潜在している
「一村一品の思いでやってきました」と語る小野さん。道立静内農業高校の元校長で、食品加工が専門だ。真狩村ではルバーブのジャム、東藻琴村(現在の大空町)ではスモモのジャムやジュース…。教員として各地で勤務し、地域に潜在している宝物を使って加工品を開発することを心掛けてきた。
◇持続可能な農業を目指して
退職後は、鶏糞(ふん)・牛糞(ふん)など家畜の排泄物の有効利用や、放線菌などの土壌微生物が活動しやすい土作りに携わっている。きっかけは農業を営んでいる教え子からの「大地が病んでいる」という連絡。土地がやせ、作物が根腐れしてしまい収穫できなくなってしまったのだ。
家畜の排泄物に有機物質を加え、土壌微生物の働きで発酵させると完熟堆肥となり、健康な土作りにつながる。「健康な土からは栄養豊富でおいしい野菜が育ちます」と語る。
別海町でも家畜の排泄物を有効利用するプロジェクトに携わった。排泄物が発酵するときに発生するバイオガスを燃焼させて発電する。その発電量は、別海町の約40%の世帯の電力をまかなうほどだ。排泄物は2週間ほどで発酵しなくなり、その後は液体の肥料「バイオ消化液」として農業で利用する。「自然循環型の農業を目指した、先駆的な取り組みです。持続可能な農業にもつながります」
持続可能な農業を目指すのには理由がある。深刻な人出不足だ。「明日の担い手を確保するため、農業従事者が夢や希望を抱ける社会になってほしいです」
◇北広島へ移り住んで
北広島へは平成31年に移り住んできた。印象を尋ねると「人が温かいです」。地域で草刈りなどをしていると、よくねぎらいの言葉を掛けられるそう。
休日の過ごし方は、新聞のスクラップ。北広島の出来事や農業関係の記事が多い。猛暑でタマネギが小玉となる記事を目にした時は、タマネギ農家の教え子に連絡をとり肥料などのアドバイスもした。
小野さんの教えが各地に根ざし、実を結ぶことを願っている。
