- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道鹿追町
- 広報紙名 : 広報しかおい 令和7年12月号
◆『南に渡るもの、北に渡ってくるもの』
気温が雪降るごとに下がる師走。広葉樹の葉はすっかり落ち、森の中にも日差しがあたるようになりました。針葉樹と広葉樹の混じる然別湖の森では冬の方が林床に落ちる木漏れ日の面積が増え、日だまりの光景が温かみを感じます。
これから降る雪は根雪となり地表を毛布のように包みます。この根雪のおかげで植物たちは厳冬期の極寒から守られ冬を乗り越えることができるのですが、数年前にはこの根雪がなかなか降らず私たちもヤキモキした記憶があります。この年は笹が寒風にさらされ広い面積が枯れてしまいました。この10年、20年、30年前と気候のことを振り返ると根雪が降る時期が近年遅くなっています。気候変動の影響があるのでしょうか。雪を待つ日が多くなりました。
然別湖では、1月下旬から3月中旬まで、結氷した湖面の上で氷の家(イグルー)を制作し、『しかりべつ湖コタン』というイベントを開催しています。その氷の家の素材になるのが雪。建築資材になる雪がなければ作業に取り掛かれません。12月の降雪量は冬イベントの運命を握っています。ただ雪さえあれば良いということでもなく、寒さも必須でこの足並みがそろうことが大事です。寒さは然別湖の湖水を冷やしていき例年通りであれば今月中には湖面の全面が結氷します。1日でも早く結氷し氷の厚みが成長してくれると1月には氷上に人が乗ることができ、イグルーを建設することが可能になります。毎日天気予報とにらめっこ、今年の雪や寒さは私たちの味方になってくれるのでしょうか。
師走ともなると然別湖で夏を過ごした鳥たちの多くが寒さから逃れるように南の地域へと渡っていきます。12月中旬頃、その逆で北国の冬を味わおうと人々が南の地域から北海道へやって来ます。
しかりべつ湖コタンを建設するにあたり、力を貸してくれるボランティアの方々も各地から多く集まってくれます。昨年はドイツ、フランス、台湾と海外から来てくれました。また全国各地の大学生や社会人も集まり、然別湖にいながら英語、中国語、日本語と多言語が飛び交い多様なコミュニケーションの輪ができていき、とても不思議な作業風景でした。ボランティアに参加してくれる方は、雪や氷に触れたり、北海道の文化に触れたくて参加を決めてくれます。その姿からも、北海道・十勝の注目度の高さを感じます。
鹿追町にお住まいの皆さまも世界そして全国から集うボランティアの方との交流機会として建設作業に参加してみませんか。鹿追町に暮らす若者たちが力を出し合って始まった冬のイベント『しかりべつ湖コタン』が、世界・日本各地から注目される存在になりつつあります。詳しくは、しかりべつ湖コタン実行委員会(【電話】69・8181)まで。
写真・文/然別湖ネイチャーセンター
【URL】https://www.nature-center.jp
