くらし 脱炭素社会と宇宙(1)

今月号から脱炭素社会と宇宙についてお話します。
第1回は大気についてです。地球ってすごいんですよ!

―地球は特別?―

脱炭素社会は最近の大きなテーマですね。
大気中の二酸化炭素が増えていることが温暖化の問題だといわれていますが、地球と同じような成り立ちの他の惑星はどうなっているか、そこを調べると何かヒントがあるかもしれません。
まずは、地球の仲間の惑星の大気がどうなっているか、調べてみましょう。6月にお話ししたように、今から46億年前にほぼ一緒に誕生した水星、金星、地球、火星の4つの惑星は「地球型惑星」といわれていて、岩石でできています。この4つの惑星の大気はどうなっているでしょうか。

◆水星
ここは、太陽に一番近くて暑いので、水などは全て蒸発、そして水星は月と同じくらいの大きさで重力が小さいため、大気をつなぎ留めておくことができませんでした。

◆金星
大気の98%が二酸化炭素です。地球よりも太陽に近くて、なんと平均気温が460℃で気圧は100気圧、これでは生物は生きていられません。数十億年にわたり二酸化炭素の温室効果が続いてきた結果だと考えられています。

◆火星
大気の二酸化炭素が約95%ですが、気圧は地球の100分の1しかありません。おそらく、重さが地球の10分の1しかないので、重力が小さくて大気をつなぎ留めておけなかったのでしょう。温度も、太陽から離れているので、平均気温が約-70℃です。

こうして近くの兄弟惑星と比べてみると、地球だけが二酸化炭素が少なくて、酸素があります。この原因は、おそらく「生物」が関係しています。
太陽からの距離がちょうど良い地球だけが、気温も温暖で地上に水がありました。その水の中で、最初の生命が誕生しました。単純な細胞から進化して、太陽の光で光合成(二酸化炭素と水から自分の体の材料である有機物と酸素を作り出す)を行う植物のご先祖様が誕生して、何十億年も活動した結果、大気中に二酸化炭素が少なくて、酸素が多い今の環境をつくり出しました。太陽の光をエネルギーとして、大気、水、土、生物の間で「命の循環」を繰り返して、他の惑星にはない特別な今の地球環境ができたのです。
次回は、地球環境を宇宙につくった「宇宙ステーション」のお話をします。

JAXA角田宇宙センター 吉田誠