文化 歴史の風 連載162

■収蔵庫の宝物 職員のイチオシ資料紹介

□海獣葡萄鏡
平成10年、城南小学校の西側(市川橋遺跡城南地区)で見つかった鏡で、直径は約14センチメートルと推定されます。
海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)は、中国唐の時代に製作された銅鏡の一種で、日本には8世紀前後頃に輸入され、正倉院や神社などに伝わるほか、法隆寺五重塔の心礎(しんそ)内や奈良県明日香村高松塚古墳からの出土でも知られています。
鏡の背面全体に西アジア由来の葡萄唐草文(ぶどうからくさもん)が施され、界圏(かいけん)という線状の高まりで内区と外区に分けられます。内区中央には、動物がうずくまった形の紐を通す突起があり、その周りにも動物が配置されています。これらは狻猊(さんげい)と呼ばれる獅子形の想像上の動物で、鏡の名称「海獣」とは海の哺乳類ではなく、外来の異獣を示す語として用いたと考えられています。外区には葡萄唐草文の下地にさまざまな動物や鳥などが、一番外側の外縁帯部分にはパルメット文(ヤシの葉を図案化したもの)などが配されることが多く、出土した破片は外区と外縁帯部分のみですが、同様の様式であることが確認できました。
正倉院宝物や古墳の副葬品としての事例から、特別で貴重なものとして扱われていたことが伺えますが、多賀城南面にまち並みが形成される以前、どのような理由でこの場所に持ち込まれたのかは謎に包まれています。

※紹介した資料は、2月末まで埋蔵文化財調査センター展示室で見ることができます。

問合せ:埋蔵文化財調査センター
【電話】368-0134