文化 国見の民話かるた

■第二十六回 密造酒のはなし
ほらかくせ 酒税官くるぞ 密造酒

昔はどこの家でもお酒を作っており、いわゆるどぶろくを作っていました。これは明治29年までのことで、これ以降は醸造元だけがお酒を作ることができ、清酒は国税の財源として、国税全体の2割から3割を占めたといいます。つまりお酒の密造は国税の大敵、見つかれば大変重い罰金を課せられたそうです。
しかし、どぶろくは先祖代々伝えられてきた楽しみ、冬の寒さをしのぐにも、労をねぎらうにも必要なものとして重宝されていました。まして清酒は高く、そうそう買えるものではなかったので、どこの家もこっそり作っていました。
一番恐いのは酒税官。突然現れ、家中を探し回り、摘発にかかる。人々は万が一に備えて、畑の隅に穴を掘ったり、トタンで囲って細工をしているふりをするなど、知恵を絞って隠していました。税官が来たとなれば風のように情報が流れ、誰かが税官にだらだらと話しかけ、隠すための時間稼ぎをしたとか。
税官との戦いが、当時の暮らしを感じさせるお話でした。