- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県国見町
- 広報紙名 : 広報くにみ 令和7年10月号
■第二十八回/大蛇になった女
水鏡 蛇に変身 ききょうの前
昔、相馬の平将門が乱を起こしたころのことです。朝廷は、武勇の誉れ高い俵藤太秀郷(たわらとうたひでさと)を大将に任じ、東国へ向かわせました。ところが、将門は並みの人間ではなく、身長が2メートルあり、矢でも石でも傷つかぬ鉄身で、おまけに7つに分身でき、どれが本物か見分けがつかなかったそうです。さあ、困ってしまった俵藤太は、将門の側女「桔梗(ききょう)の前」に近づきました。そうとは知らぬ彼女は、俵藤太の容姿と甘い言葉に心奪われ、「7人の中で『こめかみ』が動くのが本物」と耳打ちしてしまいました。そして、俵藤太は、首尾よく将門を討ち取り、乱を平定したのでした。
さて、その後、何の音沙汰もない俵藤太を「桔梗の前」は恨み、憎み、あちこちさまよい歩くうち、藤太と同じ読みの藤田・滝川のほとりまで来たとき、ふと水鏡に写った自分の顔が恐ろしい鬼女の顔になっているのを知ったのです。もはやこれまでと、彼女は川に身を投げました。すると、見る間に体がくねくねと伸び、大蛇に変身し、山深い上流へ上っていったそうです。
