くらし スポットライト

■身近なモノたちが動き出す! 日常に潜むモチーフから「擬生物」を生み出す
擬生物(ぎせいぶつ)作家 クマコロさん

「もしかしたら、いつもの食卓に〝生きもの”が潜んでいるかもしれない」。そんな遊び心あふれる発想を具現化するのは、市内在住の擬生物作家・クマコロさん。X(旧Twitter)のフォロワーは11万人を超え、寿司や野菜といった身近なモチーフを「生きもの化(擬獣化)」するというユニークな世界観が多くの人の心を掴(つか)んでいます。
幼いころから絵を描くことや玩具・怪獣などが好きで、なかでも恐竜への関心が強く「将来は恐竜図鑑を作る人になりたい」と思っていたほど。高校はデザイン科へ進学し、毎日夢中で絵を描き続けたというクマコロさん。基本的なデッサンを覚え、今の画風は高校生の時にできあがっていたそうです。
その後、もっとデザインの勉強を続けたいと金沢美術工芸大学へ入学。4年生の時、〝食卓にあるものが実は生きものだったら”というコンセプトで『静物図鑑』を制作します。「例えば〝おにぎり”は、昔話の『おむすびころりん』にあるように当時から動いて逃げ出す習性があったとか、自分の想像をあたかも真実かのように作った図鑑です」と話すこの作品で、10年後にTwitterで約3.6万いいねと約1.3万リツイートをされるほど反響を呼ぶことになる「スシニギリス」の原型も描いていました。
クマコロさんの代表作は、寿司と生きものを掛け合わせた「スシニギリス」、野菜が獣になった「ベジタリオン」、惣菜などを怪獣風に描く「スーパー大喰獣(だいくいじゅう)」など、どれも日常で見過ごされがちな題材に目が向けられています。「できるだけ原形を崩さないように、モチーフを誠実に描くことと、絵に遊び心を入れることにこだわっています。観察して、どんなアイデアを付け足したら面白いかを考え続けています」と、豊富なアイデアで静物に命を吹き込むクマコロさんの作品は、幅広い世代の人々を魅了しています。
これからも〝擬獣化と発見”をテーマに図鑑制作を続けながら、「擬獣化した遊具がある公園づくりや、伝統工芸品の擬獣化で地域貢献をしたい」と活動のアイデアが次々と溢れるクマコロさん。「自由研究でオリジナルの恐竜図鑑を作ったとか、偏食の子がスシニギリスの本を見ながらお寿司をたくさん食べたという話を聞いたときはとても嬉しかった」と微笑むクマコロさんの描く擬生物の世界に触れたら、いつもの日常が少し違って見えてくるかもしれません。