文化 ふるさと散歩道

■第364回 文化財編(41) 先人の夢と願いを乗せて時を駆ける絵馬
古来、神は馬に乗って人間世界に降りると考えられ、私たちの先祖は豊作を祈願して神々に馬を奉納してきました。『延喜式(えんぎしき)』にも降雨を祈るときは黒駒を、晴天を願うときは白駒を献じると記されており、絵馬奉納は神馬の代わりに板絵の馬を納めたことに始まると考えられています。室町時代以降は馬以外の絵馬も登場し、豪華に彩られた願いが参拝者の目を楽しませました。
さて、寛永9年(1632)に加多志波神社に奉納された黒駒の絵馬は、身体を右に向け、画面奥側の前後肢を揃って上げる「側対歩(そくたいほ)」の歩様(ほよう)を表し、貞享元年(1684)に天満神社(三尾野出作町)に奉納された絵馬にも左向きの黒駒が同じ構図で描かれています。同様の絵馬は奈良時代の遺跡からも発見されており、古い伝統をもつ祈願の構図であったことがわかります。
また、天満神社には近松門左衛門の浄瑠璃『国性爺合戦』を描いた絵馬も奉納されています。作者は越前の絵馬ブームを牽引した福井の町絵師集団「夢楽洞(むらくどう)」で、浮世の夢を楽しむ人々の心をとらえて人気を博しました。夢楽洞の絵馬は白山神社(沢町)や薬師堂(下新庄町)にも奉納されており、神仏の世界を巡った先人の夢が今も受け継がれます。
(文化課 藤田彩)

◇平成25年度指定の市指定文化財(2)
常盤御前図絵馬(河和田町)
忠臣蔵図絵馬(沢町)
漆製絵馬・鷹図絵馬(下新庄町)
和藤内図絵馬・繋馬図絵馬(三尾野出作町)
算額 2面(舟津町)
算額(水落町)
曳馬図絵馬・繋馬図絵馬(川島町)