その他 鯖江でがんばる あの人の笑顔と素顔 vol.26

全国屈指の実力派高校生ラッパー 高橋正明(まさあき)さん(17)
中央中学校を卒業し、鯖江高校定時制に通学。大会に出場する際のMCネームは「MAASA」(マーサ)。練習用のマイクはラムネ菓子付きのおもちゃ。「手に力を込めていると壊れるので3か月に1回は買い替えている」。
ラップのほかに、怪獣映画「ゴジラ」や格闘技を見るのも好き。抹茶系の食べ物が好物で、焼肉のハラミにも目がない。虫が苦手。

《ラップで刻め、青春記》
ビートに乗せて韻を踏みながら言葉を紡いでいく音楽スタイル「ラップ」で、頭角を現している高校生ラッパーだ。今夏、高校生同士で競い合う2種類の全国大会に出場し、その名を広めた。「ラップは歌詞を考える即興性や瞬発力、語彙力などが求められる言葉の格闘技。さらにレベルを上げて、いつかは日本武道館でワンマンライブをしたい」
中学2年の時、同級生の影響でラップを知った。次第に興味を持つなか、世界的ラッパー「エミネム」の半自伝的映画を見て衝撃を受けた。貧しい家に生まれ育ち、差別や自殺未遂を経験しながらも、ラップで自身の人生を切り拓いていったエミネム。その強さが14歳の心を射抜いた。
「幼稚園の頃に両親が離婚したこともあり、母親や兄妹とともに苦労もしてきた。でも、エミネムの姿に戦う勇気をもらった。僕にとって、ラップは『見る側』ではなく『やる側』だとその時に思った」
授業の合間に、お気に入りの歌詞や自分で考えた言葉をノートの余白に書き連ねては、家に帰って発声する練習を重ねた。手にはおもちゃのマイク。見様見真似で言葉を吐き出すと、4畳半の自室は自分を表現する『音楽スタジオ』になった。
忘れられない瞬間がある。学校の図書室にいたある日の昼休み、話したことのない同級生がいきなりラップで勝負を挑んできたのだ。即興での言葉の掛け合いは『フリースタイル』と呼ばれるラップの文化。当意即妙に切り返せるかが腕の見せどころだ。「初めての経験でその時はただ固まってしまったが、ラップ好きが身近にいたのはうれしい驚きだった」。
以降、校内にいるライバルとの練習やオンラインでの本格的な対戦、県内外のクラブでの実践経験などを積み上げて地道に実力を高めていった。
持ち味は低くて尖った声。飾り気のない外見から刺激的な言葉を繰り出す意外性も人気で、今年3月に初めて出場した「第21回高校生RAP選手権」(年2回開催)では1回戦を突破し、ベスト8に入った。
7月にあった第22回大会でもベスト8に入ったが、8月11日に開催された全国大会「激闘!ラップ甲子園」では1回戦で涙を飲んだ。相手は第22回大会のチャンピオンだった。それでも、下を向いているわけではない。
「今回の試合では気づきもあったし、課題も見えた。高校生として出場できるのは来春の高校生RAP選手権が最後。この経験を活かしてこれからも上がっていきたいし、僕のパフォーマンスをぜひ多くの人に生で見てほしい」