くらし 第34回 白馬村の農林業(冬季ナラ枯れ調査)

冬季におけるミズナラとコナラの内部に生息するカシノナガキクイムシ(以下ムシと言う)の生息状況を農政課と北アルプス地域振興局林務課で調査しました。

1.調査日
令和7年3月7日(金曜日)

2.場所
白馬村どんぐり地区展望台付近の村有林内(標高920m付近)

3.調査方法
(1)ミズナラ(枯れた木)とコナラ(生きている木)を、雪上から出ている地上2mで伐倒する。
(2)伐倒木を50cm間隔で玉切り、樹皮にムシの潜入孔がないか、木口にムシがいないかを割った時に目視で確認、比較する。
(3)地上から2m、3m、4m、5m、6mの部分は、5cm厚の輪切りを1枚ずつ採取し、それぞれを潜入孔がないか、また木口に虫がいないか、孔道(虫が通る道)がないか目視で確認、比較する。
(4)伐倒木は同じ高さの箇所を縦に割り、ムシの数、穴の数を目視で確認、比較する。
(5)6m以上の部分は、どの高さまでムシがいるか、50cm刻みで確認し、最高到達樹高を調べる。

4.結果
(1)枯れているミズナラには、より多くのムシが確認された。
(2)枯れていないコナラにも、ムシが確認された。
(3)3月上旬時点では目視できたムシは幼虫が多く、成虫に成りかけているムシもいた。
(4)ムシの数はコナラよりミズナラの方が圧倒的に多く、高い位置まで被害があった。

5.今後の調査
(1)雪解け後、雪に埋まっている2m以下の部分を同様の比較を行う。
(2)切り株から、萌芽(切り株から新しく目が出ること)が見られるか観察する。
(3)昨年度以前に枯れた森林の植生調査を実施する。

6.考察
(1)コナラよりもミズナラの方が被害を受けやすい。
(2)枯れたナラの内部には、非常に多くのムシが生息しており、生きているナラの内部にも少なからず生息している。
(3)景観対策としての被害木伐採は、全ての被害木を処理するための膨大な予算が必要になること、費用対効果が薄いこと、大径化したナラの伐採には危険が伴うこと、マンパワー不足等の理由から厳しく、全国的にも成功事例がない。ナラ類が大径化した場合に周期的に発生する日本古来の森林病害虫であることを住民や観光客に理解してもらうことが必要。
(4)大径化した生きたナラを伐採することで、ムシが乗り移るナラを無くし、被害拡大を防ぐとともに、萌芽更新による再生が可能となる。そのためには、積極的な森林整備事業導入が望ましい。森林整備は、所有者承諾、経営計画策定等が条件になるため、地元協議会を中心とした地域の取りまとめ役が必要である。
(5)森林整備する際は、被害が出ていない他地域への被害丸太の輸送は十分に気を配るとともに速やかにチップ化や薪割り、製材することで乾燥促進を図り、ムシが生きられない状況にする。
(6)伐採は9月以降に実施し、翌年4月までに何らかの乾燥促進対策を行い、丸太の状態で放置しないことが重要である。薪や製材は、12月末までに実施することが望ましく、薪は極力そのシーズン内に使い切る。
(7)大径化したナラは、製材し高付加価値の木製品へ加工する。
(8)村・県・民間事業者が連携し、木製品の販路拡大を目指すことが大切で、製品や材が売れることにより森林整備の財源となる。
(9)新たにナラ枯れ被害が確認された地域では、その地域のナラが被害を受ける可能性が高いため、ムシが飛び立つ5月末までに、被害木の伐倒くん蒸、チップ化等の処理をすることが望ましい。
(10)行政は、村有地、公共用地、公共施設等の人的被害防止、安全確保のための処理を基本とするが、ライフラインに隣接する土地は現地確認のうえ、処理の可否を判断する。
(11)民有地は、基本、所有者責任で処理していただく。必要に応じ令和7年度創設した、支障木伐採・森林病害虫防除事業補助金を活用し、伐採や予防薬剤による樹幹注入を行う。

お問合せ:白馬村役場 農政課
【電話】0261-85-0766