しごと 《特集》地域おこし協力隊 自然環境と体に優しい農業でまちの活性化を
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- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県竜王町
- 広報紙名 : 広報りゅうおう 令和7年3月号
地域おこし協力隊とは、地方の自治体が都市から人材を受け入れ、地域ブランドや地場産品の開発などの地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。
■地域おこし協力隊 吉田隊員を紹介
吉田さんは、大学卒業後、大手建設会社で、現場施工管理業務をはじめ、土木工事の先端技術開発などに従事していました。在職中には、テキサス大学オースティン校に留学して建設マネジメントについて学び、修士号を取得。
しかし長年、建設業界において土木工事や開発に携わる一方で、次第にそれらが環境破壊につながることを懸念し、環境保全について考えるようになりました。また、アメリカ留学で医療費の高さを実感したことから、健康に対する価値観が変化し、コロナ禍にはさらに健康に対する関心が高まりました。
「自然環境を守りながら、人々が食べて元気になれる食べ物を作りたい」
そんな生活に憧れを持った吉田さんは、独学で環境への負荷ができるだけ小さい農業を学び始めたのです。
転機が訪れたのは、2022年。当時携わっていた官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)で立命館大学の善本教授と出会い、善本教授が道の駅「竜王かがみの里」の活性化事業に取り組まれていたことから竜王町とのご縁が生まれました。
竜王町の印象を「食、歴史、文化、自然の宝庫です。これまでお会いした町民の皆さまもみな親切です。バイオマス産業都市構想や環境に優しい農業などの取り組みにとても積極的で、チャレンジ精神あふれる町だと感じました」と語る吉田さん。今後の活躍に期待が高まります。
・プロフィール
吉田健一(よしだけんいち)
昭和61年生まれ、薬師在住、大学卒業後、建設会社に勤務、令和6年9月に竜王町地域おこし協力隊就任
〔地域おこし協力隊としてチャレンジしたいこと〕
・人々が食べて元気になれる食べ物を作りたい
・農業や生活でバイオ炭の利用を進めたい
・町民の皆さんと一緒に愉しみと学びの機会をつくりたい
●吉田隊員に聞きました!
▽こだわりの「土づくり」
「いい食べ物は、いい土から作られる」という言葉のもと、昨年10月から道の駅「竜王かがみの里」近くの田畑で、まずは土づくりを開始しています。ここでいういい土とは、ミミズがたくさん住む土のことで、海外ではミミズふん土は「黄金の土」と呼ばれたりもします。そのためには、良質の有機物を田畑に大量に入れる必要があり、私は「緑肥」に着目しました。秋に種まきしたイネ科やマメ科の植物は春になって急成長するので、それらを刈ってすき込みます。そうすると、有機物を分解する土中の微生物やミミズが増え、その結果、植物にとって栄養豊富な土が出来上がることが期待されます。また、土を植物で覆うことは、農地のCО2吸収量を増やすことにもつながります。ミミズは化学的に合成された農薬や肥料を嫌がるようなので、それらを使わずにやってみようと思います。併せて、機械で「耕す」ことは、微生物やミミズの住み家を破壊してしまうことにもなるので、「耕す」作業は最小限にしようと考えています。
今春からは、本格的に野菜づくりを開始する予定です。
▽CO2削減策としての「バイオ炭」
脱炭素の時流もあり、今は、あらゆる産業で温室効果ガスの排出量を削減することが求められています。町内の竹や果樹のせん定枝、生ごみなどの有機物は焼却処理されていますが、完全に燃やしてしまうと、有機物内の炭素は二酸化炭素となってすべて空気中に放出されてしまいます。しかし、「炭化」させることによって、炭素を炭として固定することができます。その炭を田畑に撒いたり土中に埋めることによって、二酸化炭素排出量を削減するとともに、農地での炭素固定量を増やすことができるのです。
炭は、農業でも役立ちます。空気中にある窒素を植物が利用できる形に変換する微生物は炭によって増え、他にもミネラルの補給、田んぼの水質浄化などにも有効活用できます。
多くの炭を作るときは、開放型炭化装置が使われます。野焼きに比べて発生する煙が大変少なく、短時間で作業を終えることが可能。もみ殻燻炭器にもみ殻と一緒に枝やイガグリを入れて炭化させることによって、物の形を損なわずに炭に変えることもでき、脱臭・除湿効果のあるオブジェとして生活に取り入れることも可能です。
竹は放置すると所狭しと密集します。竹を切り出して運搬、炭化する作業は危険で労力も伴いますが、竹林整備で地域に貢献し、炭に変えて農業で使うことで地球環境保全にも貢献したいです。
▽今後の活動への意気込み
地域貢献したいと思いながらも、牛ふんたい肥や炭化時の煙・においなどで近隣住民の皆さまにご迷惑をおかけしたことは大変申し訳なく思っており、今後改善していきたく思います。春から始まる稲作では、地元農業者さんの薫くんとう陶も受けながら、不耕起移植栽培や稲の多年草化にチャレンジしようと考えています。少し先の話になりますが、収穫した野菜やお米を皆さんに召し上がっていただく機会や農業体験的なイベントも開催し、農業振興のお手伝いができればと思います。引き続き、ご支援ご協力をよろしくお願いします。
・イベント開催時には、ぜひご参加ください!