子育て 教育支援委員会寄稿

■『幼児を育てる時に大切にしたいこと』
伊根保育園 園長 井上つる代

伊根保育園は、1歳児(その年に満2歳になる子)からお預かりしています。入園してくる子どもたちは、親の元から離れて初めて社会に出ます。初めて知らない場所に置いて行かれる子どもにとっては不安でいっぱいです。まだ自分の言葉で思いを表すことが出来ないので、泣いて訴えます。
4月の登園時は、送って来られたお母さんと離れる際に、「ママー」と泣き叫ぶ子どもがほとんどです。保育士は、泣いている子どもを抱っこしたり、おんぶしたりして、「そうだね、ママがいいね」「ママがよかったんだね。わかったよ」と何度も繰り返し、お母さんと一緒に居たかった子どもの気持ちに寄り添います。そうすると、子どもは『自分の気持ちをわかってもらえた(認めてもらえた)』と感じて、「保育園ではこの人(保育士)に抱っこしてもらえたら安心、信頼できる人」と思い、泣かずに登園できるようになります。これは、ほんの一コマですが、私たちは子どもの『わかってほしい』『認めてほしい』という気持ちに寄り添い、『わかろうとすること』『認めること』を大事にしています。それは、まだ自分で話せない子どもに限ったことではありません。子どもたちはみんな、○○したかった気持ちを『わかってほしい』。頑張っていたことを『認めてほしい』と思っています。ですから、話せるようになると、「先生、見て」、「先生、聞いて」と求めてきます。保育士は、手を止めて、ちゃんと見たり、聞いたりして、「そうだったんだね」「すごいね!」などと応えます。子どもたちは、ちゃんと見てくれている、わかってくれることに安心して、また次の遊びに向かったり、新しいことにチャレンジしていきます。そのような日々の積み重ねで、子どもたちは自己肯定感を育み、自信をつけて、意欲的に生活できるようになっていきます。
『わかってもらえる』ことで安心感に満たされた子どもは、遊びに没頭し、様々なことに興味を広げていきます。それこそが、主体的に遊ぶ(学ぶ)ことに繋がっていきます。私たち大人は、子どもが安心して思いを出せるように、いつでもその思いを受け止め、理解する(理解しようとする)存在でありたいと思います。
子育て中の保護者のみなさんは、日々、本当に忙しくされています。ですが、子どもたちが「見て」、「聞いて」と言ってきた時には、是非、ちょっと手を止めて、見たり、聞いてみたりしてください。そこには、安心感で満たされた子どもの笑顔があるでしょう。
子どもたちの元気な声や屈託のない笑顔は、誰でも元気にしてくれます。子どもたちを笑顔にする時に、保護者の心が安定していることはとても重要です。子育て中の保護者のみなさんが抱えている不安や大変さを理解して、地域全体で応援してあげてほしいと思います。そして、地域の宝である子どもたちが誰からも大事にされ、健やかに成長していくことを願います。