- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府豊中市
- 広報紙名 : 広報とよなか 2026年(令和8年)1月号
・名誉市民 映画監督・脚本家 山田洋次さん
・豊中市長 長内繁樹
市の名誉市民で映画監督・脚本家の山田洋次さんの91作品目の監督作となる映画『TOKYOタクシー』の先行上映会を10月24日、文化芸術センターで開催しました。
当日、舞台あいさつに訪れてくださった山田監督が、作品への思いや未来への希望について語ってくださいました。
■映画『TOKYOタクシー』に込めた「昭和」
市長:本日はお天気に恵まれました。監督には、市制施行80周年の際に名誉市民になっていただきました。先行上映会のたびにお越しくださり、本当にありがとうございます。
山田:こちらこそ、こうして呼んでいただき、豊中の皆さんに温かく迎えてもらってうれしく思います。こんなに大きなホールで上映していただけることは、ほかにないと思います。
市長:今回の作品『TOKYOタクシー』は現代の東京を描きながらも、背景には「昭和」という時代の積み重ねが感じられますね。人々の暮らしや思いが一台のタクシーの中に詰まっているようで、とりわけ倍賞千恵子さん演じる85歳の女性が、戦争を経て復興を見つめてきた姿が印象的でした。
山田:そうですね。昔のまちには、小さな商店が軒を連ね「今日は何を食べるかい?」「まけてあげるよ」と声をかけ合うといった、そんなまちの良さがありました。今はとても便利な世の中になりましたが、そうした人と人のつながる場面が少ないように思います。
市長:確かに、買い物へ行ってもセルフレジ化が進み、人と対面することも少なくなってきました。お金のやり取りをするだけだとしても、手渡しの温かさが恋しくなる時があります。
山田:慣れないお店では、お金を入れたりボタンを押したりするのに戸惑うこともあります。店員さんがいるのだから、受け取ってほしいなと。効率的だということは分かりますが、どこか寂しいと思う自分がいます。
市長:映画の中で倍賞さんは、今までとはちょっと違った役柄でしたね。温かさや厚みのある昭和の時代を懐かしみながらも、思い出したくない過去を背負って前向きに生きる姿が心に残りました。
山田:芯が強く、主張をしっかりする女性でしたね。作品全体で昭和の時代の良さが表現できればいいなと思いながら撮っていました。現代の若者は昭和にあったものを「レトロ」と懐かしく思うことがあるそうです。その時代を知らないのに「懐かしい」と感じてくれるのは、忘れてはいけない大事なものに気付きはじめたからではないかなと思います。
最後の倍賞さんからのプレゼントには、「時代の良さを次の世代につないでほしい」という意味が込められていたのかもしれません。
市長:単なる「良き時代」というより、人の優しさや思いやりの象徴として昭和が描かれていると感じました。便利さの追求とは別の価値があるというメッセージですね。
■ふるさと豊中・岡町への思い
市長:監督が豊中にお住まいだったのは、昭和8年ごろですよね。
山田:そうですね。岡町に生家があります。今もお住まいの方がいらっしゃって、家はまだ現役です。
市長:監督の作品『小さいおうち』のモデルにもなったと伺いました。今も住んでいただいていることはありがたいことですね。
山田:不便に思われることは承知ですが、折り合いをつけながら住み続けてくれていることに感謝です。便利さだけでは得られない幸せがあります。今こそ、そんな価値を見直す時かもしれませんね。
市長:監督のお住まいだった岡町周辺は、原田神社を中心に商店街があり、昔からの風情が残っている場所です。
山田:やはり自分のふるさとは、いつまでも幼き日の自分に戻れる場所であってほしいものです。市民の皆さんにはこのまちを誇りに思って、大切にしていってほしいです。
市長:本日は、お越しいただき、本当にありがとうございました。
■写真でふりかえる 名誉市民・山田洋次さんと豊中市
▽平成26年6月
2歳まで過ごした生家を訪問。「当時と変わらない姿に感動した」と語られました。
▽平成28年10月
市制施行80周年にあたり、豊中市で2人目の名誉市民に。記念式典で、名誉市民称号を贈呈しました。スピーチでは「豊中は人情のあるまちだと感じます」と語られました。
▽平成29年5月
文化芸術センターで開催した「家族はつらいよ2」の先行上映会では、舞台挨拶に登壇。以降、山田監督の新作映画は、文化芸術センターで先行上映会を行っています。また、上映会にあわせて、毎回豊中にお越しいただいています。
上映後の舞台あいさつでは、同作品の出演俳優・北山雅康さんとの撮影エピソードなどを交えたトークが繰り広げられました。
■山田洋次さん 映画監督・脚本家
時代とともに移り変わる家族の姿を心情豊かにリアルに描いた作品を多く世に送り出している。
市制施行80周年を記念し、平成28年(2016)に名誉市民に選定。
■movie information
「TOKYOタクシー」
フランス映画『パリタクシー』を原作としそこから着想した、刻々と変化する大都市「東京」を舞台に、人生の喜びを謳いあげる感動のヒューマンドラマ。
