- 発行日 :
- 自治体名 : 奈良県下北山村
- 広報紙名 : 広報下北山 2025年7月号
第2回:脱水症について
下北山村診療所の船迫です。私が下北山村に赴任して早いことに4ヶ月ほどが経ちました。診療所での仕事も村での生活も徐々に慣れてきてうれしく思っております。
今回は「脱水症」について、ご説明させていただきます。これからの時期は気温も上がり、脱水症や熱中症の危険が高まります。しっかり対策して暑い時期を乗り越えましょう!
(1)脱水症とは
私たち人間の身体の約60%は水分で構成されています。脱水症は身体への水分補給量の低下もしくは身体が失う水分量の増加、さらにはその両方が発生することで起こります。
(2)脱水症で起こる症状〜最悪の場合、臓器障害や死に至る〜
体重の2%の水分を失うと、喉の渇き、めまい、ふらつきの症状が出ます。さらに脱水が進行すると、頭痛、吐き気、体温の上昇が起こります。また、尿の色が赤く感じるほどに濃くなり、やがて尿が出なくなります。10%失うと意識がもうろうとし、けいれんを起こします。20%の水分を失うと、腎臓を始めたくさんの臓器が障害されてしまい、最悪の場合、死に至ります。
(3)高齢者では脱水症が起こりやすい
ご高齢になると、身体の水分を貯めている筋肉の細胞が減るため、体内の水分量は50%に減少し、脱水症になりやすくなります。
また、脳にある口渇、飲水中枢が衰えてしまい、喉の渇きを感じにくくなります。体温調節機能も低下し、暑さにも気づきにくくなります。
その他に「トイレに行きたくなるのが嫌だから水分を飲まないようにしている」と水分摂取を避ける傾向のある方、クーラーの使用が嫌いな方は脱水症になりやすいので特に注意が必要です。更に利尿薬と呼ばれる薬を飲んでいる方は、腎臓から水分をより捨てることになるため、脱水になりやすいです。
このように、特に高齢者では脱水状態に陥りやすく、夏だけに限らず、一年中いつでも脱水症が起きうるので注意が必要です。
(4)脱水症にならないために〜お酒、コーヒーは逆効果〜
(ア)水分をしっかり摂る
人間は1日に1・5L(コップ約8杯)の水分を取る必要があります。屋外で活動していなくても、皮膚や呼吸から失われる水分(不感蒸泄)があるため、室内にいても水分摂取が必要です。屋外で活動される方はさらに水分補給が必要になります。
また、食べ物の中にある水分、食べ物を代謝することで生まれる水分(代謝水)も水分補給となるので、規則正しい食生活も重要です。お酒で水分補給をしているから大丈夫と思っている方がたまにおられますが、それは誤解です。実は、アルコールには腎臓からの水分排出を促す作用があり(利尿作用)、飲んだ水分量以上に尿から水分が排出されてしまいます。お酒を飲んだ夜は水を飲んでから寝るようにしましょう。同様にコーヒーなどのカフェインが入った飲み物も利尿作用があります。水分補給したことにはならないので注意してください。
オススメの水分の種類としては市販のものでは、OSー1(オーエスワン)があります。スポーツドリンクは砂糖の量が多いため、2倍に薄めて飲むことをおすすめします。
(イ)部屋の温度を調整する
具体的には、24度を越えたら、家の換気を良くするために窓を開けておきましょう。28度を越えると脱水に加えて熱中症の危険性も増します。扇風機やエアコンを使用しましょう。31度以上になると、屋外での作業はなるべく避け、15分ごとに水分と塩分を取る必要があります。エアコンも積極的に利用してください。
最近の夏は異常なほどに暑くなっています。水分補給をしっかりし、エアコンも使用して乗り切りましょう!
※心臓の機能が悪くて水分の摂取量が制限されている方は診療所で検査を行いながら慎重に脱水にならないように見ていきましょう。
下北山村診療所
船迫 哲也