- 発行日 :
- 自治体名 : 島根県安来市
- 広報紙名 : 広報やすぎ「どげなかね」 令和7年12月号
■古代から続く5市のつながり~『出雲国風土記』から~
今回は『水運』をテーマに、5市のつながりについてお話します。
▽交通・流通の大切さ
現在、私たちの生活を支えているのは、人や物、情報の交通・流通です。安来市、米子市、境港市、松江市、出雲市(5市)とその圏域には、2カ所の空港があり、縦横3つの自動車専用道が通じています。鉄路も含めて、欠かせないインフラです。
しかし、車社会が人々の生活に深く浸透し発展したのは高度成長期以降で、鉄道の開通も明治後半以降です。それまでは船による水上交通が主役でした。
▽古代の水運と地域圏
水運には長い歴史があり、奈良時代に作られた『出雲国風土記(いずものくにふどき)』(733年完成)では、5市の東西を中海・大橋川・宍道湖が貫いています。風土記では、この3湖川を分けては呼ばず、「入海(いりうみ)」として一つの名で記しています。日本海とは砂州(さす)で隔てられる入海は、地域の交通・流通に大きな役割を果たしていたことでしょう。
安来市、米子市、境港市は都のある東側の出入り口、出雲市は文明の先端たる大陸や九州との出入り口として、重要な役割を担いました。松江市は二つの湖の間で、全域の水上交通をコントロールしていました。
▽国境(くにざかい)(県境)は作られた線
『出雲国風土記』は、出雲国のことを記す一方、伯耆国(ほうきのくに)について米子市の粟島(あわしま)神社の小山を「粟島」、境港市を「夜見島(よみのしま)」とし、江島や美保関町との関わりを記しています。風土記の編纂者(へんさんしゃ)は、中海から宍道湖の圏域を一体として見ていたのではないでしょうか。古代の国境は国家の都合で引かれた経緯もあり、現在の県境もそれを引き継いでいるのです。
(執筆:松江市文化財総合コーディネーター 丹羽野 裕(にわの ひろし))
問合せ:中海・宍道湖・大山圏域市長会事務局
【電話】0852-55-5056
