文化 世界農業遺産〔GIAHS〕に認定されました
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- 自治体名 : 島根県奥出雲町
- 広報紙名 : 広報奥出雲 令和7年11月号
■たたら製鉄を再適用した奥出雲地域の持続可能な水管理及び農林畜産システム
◆世界農業遺産〔GIAHS(ジアス)〕とは
Globally Important Agricultural Heritage Systems
社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それと密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農業を営む地域(農業システム)であり、国連食糧農業機関(FAO)により認定されます。
◆認定証授与式
10月31日(金)、国際連合食糧農業機関(FAO)の本部(イタリア・ローマ)において世界農業遺産認定証授与式が開催されました。
式典では、世界農業遺産に認定された地域に認定証が授与され、奥出雲町農業遺産推進協議会副会長の石原武志奥出雲町議会議長が、石原一志奥出雲町自治会長会連合会長、山本拓樹島根県農林水産部長らとともに受理しました。
また、展示ブースでは認定された14か国28地域の地域紹介が行われ、奥出雲町は、たたら製鉄の歴史と農業のつながりや、仁多米をはじめとした特産品を紹介しながら、奥出雲の農業システムについて説明しました。
この度、奥出雲の農林畜産業が世界農業遺産に認定されたことは、奥出雲の人々が長い歴史の中で自然と共に生き、先人の知恵を受け継ぎながら歩んできた情熱と努力が、世界的にも価値があるものと認められた証であり、大きな誇りです。
「たたら製鉄」の精神を受け継ぎ、水や森、土地を大切にし次の世代へしっかりと繋いでいく責任を感じます。
今回の認定を機に、奥出雲の農業・農村の価値を再認識するとともに、農業、観光の振興、地域活性化を図るため、国や県の協力を得ながら、世界農業遺産の保全と活用の取組を進めてまいります。
奥出雲町農業遺産推進協議会会長
糸原 保
(奥出雲町長)
■世界農業遺産に認定された内容を紹介します
世界農業遺産は、地域環境を生かした伝統的農法や、生物多様性、農村文化・景観が守られた土地利用など地域のシステム全体を「環境の変化に適応させながら次世代に引き継ぐ」ことを目的としています。
世界的な重要性、地域の特徴(FAOが定める5つの認定基準)及び保全計画に基づき以下の内容で評価されました。
(1)食料及び生計の保障
自然と共生する循環型農業
・稲作を中心に、和牛飼養による堆肥の施用、耕畜連携の農業が受け継がれています。
・稲作と和牛、シイタケ、ソバ栽培と組み合わせた複合的経営が行われています。
・水稲、和牛、ソバ、特用林産物の生産が本町の農業生産額の約9割を占めています。
(2)農業生物多様性
遺伝資源の保存
・農業を通じて、水田や水路の水辺、畦畔草地、森林の環境が維持されています。
・農業を通じて、自然生態系が維持保全され、多様な動植物が生息しています。
・森林の環境が保全されることで、訪花昆虫などの生息地として、ソバなどの結実率を高め、遺伝資源を保存しています。
(3)伝統的な知識システム
資源の循環利用
・和牛の排泄物を再利用し、堆肥を施用した土づくりが行われています。[農地の利用]
・森林を循環利用した木炭、シイタケ等の生産が行われています。[森の利用]
・水を安定供給するため、水路・ため池の共同による維持管理と、水の利用管理の慣習が継承されています。[水の利用]
(4)文化、価値観及び社会組織
・農業を通した伝統行事、地域の祭りが伝承されています。(大呂愛宕祭、阿位押輿神事など)
・四季と農業、暮らしの中で、郷土食が息づいています。(そば、笹巻きなどの食文化)
・五穀豊穣の祈り、収穫への感謝、牛馬の安全祈願等が地域で行われています。(価値観)
・水路組合等の水利組織により共同で水路網を維持し、水の利用調整が行われています。(社会組織)
(5)ランドスケープの特徴
特異な景観
・たたら製鉄の鉄穴流しと呼ぶ砂鉄採掘技術によって山々を切り崩し、広大な農地が開発されました。
・鉱山跡地を農地に再生し、水路やため池を農業用に再利用しました。
・四季折々の里地里山や地域固有の景観が農業の暮らしの中で維持保全されています。
◇奥出雲の伝統的農業のポイント
(1)伝統的な水管理…
・集落の全農家による水路の共同維持管理(補修・泥上げ、草刈りなど)
・水路組合により水の利用調整を行う慣習(渇水期は平等に水を配分、大雨の時は水路が決壊しないよう排水を実施)
(2)資源循環型農業…
・牛ふんや山草による堆きゅう肥を施用した土づくりによる、仁多米の生産
・和牛の飼養管理技術や繁殖基盤を受け継ぎ、耕畜連携の農業を継承
・森林資源を循環利用した木炭生産やシイタケ等の栽培
■世界農業遺産認定記念シンポジウムを開催します!
世界農業遺産の認定を受けて、農業遺産について理解を深めるとともに、今後、認定をどのように活用するかを参加者の皆様と考えます。
日時:令和7年12月20日(土)
午後1時30分~4時30分
会場:カルチャープラザ仁多3階大集会室
内容:基調講演(1)東京大学八木信行教授(2)京都大学藤原辰史教授/パネルディスカッション
◎参加無料ぜひご参加ください。
※詳しくは広報紙P3をご覧ください。
