くらし 私たちと人権シリーズ

『立ち直りを支える明るい社会へ』

保護司 河本 弘幸

自営業を営む傍ら、保護司や動物愛護団体の活動に携わるようになって、早いもので10年が経ちました。人口減少に伴い、この20年間で私たちが関わる保護観察処分の対象者数は半減していますが、そのうち約40%は薬物関連の案件であり、再犯率も60%と増加傾向にあります。「罪を憎んで人を憎まず」ということわざがありますが、残念ながら、すべての人が反省しているわけではないという現実もあります。
現代はストレス社会とも言われ、自分以外に興味を持たない人が増え、地域や社会における「協力」「共助」といった言葉が、もはや死語になりつつあると感じることが増えました。保護司の活動の一つに、罪を犯した人の就労先を見つけるために「協力雇用主」を募る取組があります。しかし見えない壁があり、社会復帰は、現実的にはかなりハードルが高いと感じます。
アメリカでは、犯罪歴のある未成年の少年たちに、生後間もない保護犬を一人一頭与え、1日中ともに生活し、出所後もその犬を終生育てることで、命の大切さを学ばせるカリキュラムがあると聞きます。
犯罪への反省はもちろんのこと、命の尊さや他者への優しさを、社会の中で学ぶことが大切です。人生には多くの分かれ道があり、誰しもがある日突然、犯罪や冤罪によって事件の当事者や加害者・被害者になる可能性があります。
こうした現実の中で、色眼鏡で人を見るのではなく、自ら手を差し伸べる姿勢を持っていたいものです。ボランティア活動は見返りを求めるものではありませんが、結果が出なければ心が折れてしまうこともあるかもしれません。
多くの人が、心の拠り所を求めています。いずれ私たちも年を重ね、誰かの助けを必要とする日が必ず訪れます。だからこそ、今のうちに「親切の貯金」をしておけば、きっと未来にその恩恵が還ってくると信じています。
人は変われます。大切なのは、その「機会」を与えることと、「学ぼうとする心」です。