くらし あらためて同和問題を考える~自分ごととして~

「同和問題とは何か」と聞かれて、すぐに説明できる人はどれくらいいるでしょうか。
今では「人権問題」という言葉が広く使われています。

昭和40年に「同和対策審議会答申」が出され、昭和44年には「同和対策事業特別措置法」が公布されました。これにより、国や地方自治体が中心となってさまざまな事業が行われ、生活環境の改善や教育の充実などが進められてきました。
学校教育でも、昭和40年代から本格的な同和教育が始まり、子どもたちが差別の歴史や人権の大切さを学ぶ機会が設けられました。

美波町においても、こうした流れを受け、同和対策課(平成14年度廃止)が設置され、ハード面では環境整備を行うとともに、ソフト面では人権啓発や地域交流を進めてきました。
なかでも、被差別部落の人々の「差別のない社会を築きたい」という強い願いによって全国に設置されたのが隣保館です。
美波町(旧日和佐町)では昭和58年9月に隣保館が開設され、相談事業、交流事業、啓発活動などを通して、地域に寄り添う取組みを続けています。
平成14年に特別措置法が失効したのち、特別対策から一般対策へと移行しましたが、その後も人権教育・啓発の推進に関する法律(平成12年)、部落差別の解消の推進に関する法律(平成28年)などが制定され、今も取り組みが続けられています。
また、美波町人権教育協議会による人権懇話会や講演会、映画上映会などの啓発活動も積極的に行われています。
毎年開催される「みなみ・にこにこ人権フェスティバル」は今年で27回を迎え、300人を超える参加者に支えられながら、人権について考える場として定着しています。
こうした取り組みにより、差別解消に向けた意識は確実に広がってきましたが、今なお部落差別が存在するという現実があります。
差別する側には何気ない一言でも、差別を受ける側にとっては、深い不安や恐怖を生むことがあります。
差別問題は、被害を受けた人の問題ではなく、差別をする側の意識の問題でもあります。私たち一人ひとりが、自分の中の思い込みや偏見に気づき、行動を見つめ直すことが大切です。

結婚をめぐる差別も、今なお深刻な問題です。
相手が被差別部落の出身であるという理由だけで結婚を反対されたり、婚約を解消されたりする「結婚差別」は、部落差別の中でも最も根深い課題といわれています。
結婚は、二人の意思で決めるものであり、憲法によってその自由と権利が保障されています。
しかし、親や親族の中には、調査会社などを通じて相手の出身を調べる「身元調査」を行う例もあります。
偏見や思い込みに基づいた行為は、決して許されることではありません。

こうした調査を「しない」「頼まない」「協力しない」ことが大切です。
しかし、残念ながら不当な身元調査や個人情報の不正取得が行われるケースもあります。
そのような人権侵害を未然に防ぐための仕組みとして、「本人通知制度」があります。
これは、住民票や戸籍の写しなどが代理人や第三者に交付された場合、事前登録した本人にその事実を知らせる制度です。
美波町でも登録を受け付けています。自分のプライバシーを守るためにも、この制度を活用してみましょう。
日本固有の問題である部落差別。

その解決には、国や自治体の取り組みだけでなく、私たち一人ひとりの意識と行動が欠かせません。
人権を大切にし、誰もが安心して暮らせる町を、みんなで築いていきましょう。

町民一人ひとりが相手を思いやり、多様な価値観を認め合う社会をめざしましょう。
「心温かい人々が暮らす、にぎやかな過疎の町」美波町であり続けるために人権について考え守っていくことがまさに、“にぎやかそ”美波町まちづくりにつながります。このコーナーでは人権に対する思いを掲載していきます。