講座 竹田医師会病院 健康だより 第27回

■心臓弁膜症について
心臓には、全身の静脈から戻ってきた血液を肺へ送り込む右心系と、肺で酸素化された動脈血を全身へ送り出す左心系と呼ばれる2つの血液の流れがあります。右心系(右心房、右心室)と左心系(左心房、左心室)は、それぞれ2組の弁を備えており、これら合計4組の弁組織が適切に開閉することで血流を制御しています。心臓弁膜症(以下、弁膜症)とは、これらのいずれかの弁が何らかの原因で機能不全を生じ、心臓のポンプ機能に支障を生じた状態を指します。ここでは、高齢化に伴い発症頻度が増加している左心系の弁(僧帽弁、大動脈弁)の異常について説明します。
左心房と左心室の間にある僧帽弁と、左心室と大動脈の間にある大動脈弁がそれぞれ狭く開放しにくくなる場合を狭窄症、閉鎖が不十分で逆流を生じる場合を閉鎖不全と呼んでいます。近年では、高齢化に伴って僧帽弁閉鎖不全症と大動脈弁狭窄症が増加しています。
弁膜症の原因には、加齢による組織の変性・硬化、心筋梗塞や心筋症による心拡大、弁輪拡張症、感染症、先天性などがあります。病状が進行すると、心臓のポンプ機能が低下することで息切れ・むくみ・体重増加などの心不全症状が出現します。僧帽弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄症では、左心房に負荷がかかることで心房細動という不整脈を生じやすくなり、動悸や息切れ、さらに左心房内に血栓形成を生じると脳梗塞の原因にもなります。重症大動脈弁狭窄症では、失神や狭心症を生じる場合があります。
弁膜症は、聴診での心雑音、心電図検査、X線検査、心エコー検査などで診断されます。弁膜症と診断されれば、重症度に応じた治療がなされます。中等症までは、主に不整脈や心不全に対する薬物療法が行われます。重症化した場合は、外科的手術(弁形成術、弁置換術)が実施されますが、近年では、経皮的大動脈弁植え込み術(TAVI)などのカテーテルを用いた治療も盛んに実施され、高齢者においても良い成績を上げています。動悸や息切れなどの異常を感じた場合は、迷わず近隣の医療機関を受診されることをお勧めします。

問合せ:竹田医師会病院循環器内科 原
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