文化 薩摩スチューデント渡欧160周年記念「れいめいの風」

■薩摩スチューデントと長州ファイブ
1865年にイギリスへ密航留学した薩摩スチューデントよりも2年早く、長州藩(山口県)からイギリスへ密航留学した5人がいます。後に「長州ファイブ」と呼ばれた彼らは、初代内閣総理大臣を務めた伊藤博文や外務卿の井上馨、工部卿の山尾庸三、造幣の父と呼ばれた遠藤謹助、鉄道の父と呼ばれた井上勝で、明治新政府の中枢を担う者たちでした。
1865年7月、薩摩スチューデントの1人がロンドン市内で偶然日本人らしき者を見かけ、衝撃を受けます。数日後、既に帰国していた井上馨と伊藤を除く、山尾、遠藤、井上(勝)の3人が薩摩スチューデントの宿舎を訪ねてきます。当時、国内において薩摩藩と長州藩は犬猿の仲でしたが、異国の地で出会った彼らは日本人の同志という意識が芽生え、頻繁に交流を深めるようになります。
ある時、山尾はスコットランドのグラスゴーに行って造船を学びたいが、資金不足のため諦めかけていることを薩摩スチューデントの学頭であった町田久成に相談します。藩のお金を貸すわけにはいかなかった町田は、薩摩スチューデントたちの手元金から各1ポンドずつ徴収し、合計16ポンドを山尾へ工面したのです。国内で薩長同盟が締結されるのは、この半年後。イギリスでは一足先に薩摩と長州の若者たちが互いに支えあい、交流を深めていたのです。

薩摩藩英国留学生記念館スタッフ 松原佳南
参考文献:犬塚孝明『アレキサンダー・ウィリアム・ウィリアムソン伝』海鳥社(2015)

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