- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県徳之島町
- 広報紙名 : 広報徳之島 令和7年6月号
■ケンムン・キジムナー マジムン~共通点と相違点~
徳之島を含め、奄美の島々では「ケンムン」と呼ばれる木の妖精(妖怪)がいると信じられています。ケンムンの特徴は、ガジュマルやアコウの樹にすみ、子どもくらいの身長で、髪や全身が真っ赤。夜行性で、魚の目玉を好んで食べます。苦手なモノはタコとオナラです。
江戸時代に記された『南島雑話』には、人間にあだをなさず、山仕事(まき拾いや木こり)の手伝いをし、相撲が好きで、人間に会うと無理やり相撲をとると書かれています。南島雑話に描かれているケンムンの絵は、頭の上に皿があるので、河童の要素が含まれているようです。また、ある昔話では、「ガジュマルを切るとたたりで大風が吹く」と伝えられています。
一方、沖縄でも、キジムナーやブナガヤーと呼ばれる、ケンムンとよく似た木の妖精(妖怪)がいると信じられています。キジムナーもガジュマルの樹にすみ、子どもくらいの身長で、髪や全身が真っ赤。夜行性で、魚の目玉を好んで食べます。ケンムンと同じくタコが苦手で、オナラも嫌いです。また、鶏の鳴き声を真似すると「絶交」されます。いたずらをしたり、棲み処(すみか)から追い払うようなことをすると報復され、怖いことに目が見えなくなることもあるそうです。
ケンムンとキジムナーには共通点も多いですが、一番の違いは、「相撲を取るケンムン」と「相撲を取らないキジムナー」だと思います。
徳之島ではハブのことを島口で「マジムン」と呼びますが、沖縄ではハブをマジムンとは呼びません。沖縄では、マジムンには「妖怪」や「幽霊」という別の意味になります。キジムナーも妖怪の仲間なので「マジムン」になります。
ハブもマジムンも怖い存在ですが、実生活では、徳之島のマジムンである「ハブ」の方が、怖い存在なのかもしれません。
(郷土資料館 大屋匡史)
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