- 発行日 :
- 自治体名 : 沖縄県八重瀬町
- 広報紙名 : 広報やえせ 令和7年5月号
■天女と羽衣
字宜次 出身
話者:大正5年生 男性
西原町我謝の集落にユブシガーという井戸がありまして、四年に一回、八月に拝みに行っていますがね。このユブシガーにこんなチテーバナシ(伝え話)がありますよ。
天から降りてきた美しい女がね、ユブシガーで水浴びをしていたそうだ。そこに幸地ヌ比屋(コウチヌヒャー)という名の男が通った。水浴びをしている天女があまりにも美しかったので、幸地ヌ比屋は松の枝に掛けてあった天女の羽衣を隠すことにした。
水浴びを終えて、天女が着替えようと羽衣を探すが、どこにもそれは見当たらない。羽衣が無ければ天へは二度と戻れない。どうしたらいいものかと天女は大変困り果て泣いていると、松の木の陰から幸地ヌ比屋が現れた。
泣いている天女に声を掛けると、幸地ヌ比屋は自分の着物を天女に着せて、家に連れて帰った。天女は天にも戻れないので、幸地ヌ比屋と一緒に暮らすことにした。一緒に暮らすうちに夫婦になり、子どもを二人もうけた。
それから月日が経ち、ある日のこと。上の子が泣いている兄弟に子守り唄を聴かせていた。天女がその唄を聴いていると、「羽衣がどこそこに隠されているよ」と唄っているではないか。慌てて、その場所を探しに行くと、羽衣は確かにそこにあった。
天女は見つけた羽衣を身にまとうと、子どもを両脇に抱えて、幸地ヌ比屋を残し天へ昇っていったそうだ。
今回、掲載した昔話は昭和57年~59年に八重瀬町内各字の皆様のご協力を得て収集した昔話の内の一話です。令和5年度より「八重瀬町伝承話資料保存継承事業」が始まり、この事業の一環で話者のご家族にその当時収集した昔話について、使用許諾を得られた話を紹介しています。
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