■AI時代だけれど、“人の声”も届けたいです
目黒区音訳の会ひびき
奥沢菜穂子(おくさわなおこ)さん
◇プロフィール
視覚障害者のための音訳ボランティア、目黒区音訳の会ひびき(以下、ひびき)に所属。20年以上活動を続けている。
職業はナレーター。温かく優しい等身大の声で、CMや番組のナレーションを数多く担当している。
◇イラストや図表の説明も全て音にして届ける
区内で活動する音訳ボランティア、ひびきは1984年に発足し、今年で39年。現在26人が所属し、3年に1回のペースで募集するメンバーは、半年ほど講習を受け、試験で合格した後、活動します。
ひびきに20年以上所属する奥沢さんに、音訳ボランティアについて伺いました。「視覚障害のかたなどのために、視覚からの情報を全て音にして伝えるという作業を行っています。書籍であれば、本文はもちろん、表紙やイラスト、図表の説明も全て言葉にして、目の不自由なかたが、音だけで聞いても、内容が分かるように読みます」。
◇めぐろ区報のほかリクエストを受けて、本の音訳も
「めぐろ区報や区議会だより、選挙広報、計画の冊子など、目黒区から発行される冊子のデイジー版(視覚障害者等向け録音資料)作成のほか、図書館の蔵書でリクエストがあった本も音訳しています。区報の場合、記事ごとに担当を振り分け、読む人とチェックする人、編集する人で、毎回8人から9人のチームで作成します。書いてあるものは基本的に全て読みます。例えば、円グラフだったら『円グラフがあります。◯◯の項目があります。12時の方向から時計回りに読みます』など、読み方の形式がありますが、初見で説明するのはすごく難しいので、あらかじめ原稿を作ってから、それを読むようにしています。200ページを超えるような目黒区の冊子などは、数カ月かけて作成することもあります」。
◇AIと、人の声との両立で
「文字を音にするというと、今はニュース番組などでも、一部A(I人工知能)が読み上げているものもありますよね。アナウンサーだったら、うれしいニュースと悲しいニュースでは、意識していなくても声色が少し変わったりすると思うのですが、AIは聞きやすいけれど、どうしても単調に感じます。聞く人の好みではありますが、これは明るい声で聞きたいとか、真剣な感じが伝わるとか、音訳には生身の人の声だからこその良さがあると思います」。今の時代だからこそ、デジタル音声を利用しつつ、人の声も大切にして音訳することの必要性を感じているという奥沢さん。
「めぐろ区報は、読み物としても面白いし、重要な情報がたくさん載っています。それらを全て正確に伝えようと、みんな一生懸命作っています。皆さんの周りに、障害がおありで、音訳やデイジー版について知らないかたがいらっしゃったら教えていただいて、どんどん利用してもらいたいです」。
「私はたまたま声の仕事をしていますが、音訳は未経験のかたでも老若男女関係なくできるボランティアです。募集は随時、図書館のウェブサイトなどでお知らせしています。興味のあるかたは、ぜひご連絡ください」。
ひびきの活動は図書館Webでご覧になれます
■めぐろ区報などのデイジー版CDを無料でお届けします
対象:身体障害者手帳をお持ちの視覚・上肢障害、脳性まひのかた
希望者は、障害者支援課支援サービス係へお問い合わせください。
【電話】5722-9846【FAX】3715-4424
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