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INA輝き人ファイル No.56 中家美千代さん(60)

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長野県伊那市

なかや・みちよ(西箕輪)
市内在住の能楽師、シテ方観世流(かたかんぜりゅう)師範。シテ方とは『能の主役(シテ)』や、場面や情景、登場人物の内面などを謡うコーラス隊の『地謡』などを担う演者のことで、観世流とは能楽五流派といわれる5つあるシテ方の流派の1つ。現在、地域での能楽普及活動に力を注ぎ、伊那能の実行委員としても活躍中。

■能を身近に 伝統文化をつなぐ
能を始めたのは、両親が伊那で能をやっていたことがきっかけでした。父親は仕事をしながら勉強を重ねて60歳のときに免状を取得し、母親と一緒に伊那で教室を開きました。両親の能を見て、舞台を観覧できる環境に育ちましたが、習うことはなかったそうです。40代になり何かやってみたいと思い、「家で能をやっているし謡をやってみようかな」という気持ちで始めたところ、見ているだけでは味わえなかった面白さに気付き、のめり込んでいきました。仕事をしながらも月に一度東京に通い、重要無形文化財総合認定保持者の坂井音重氏(令和6年3月逝去)に師事し、「伊那では伊那能も大切だし、地元で能を普及していってほしいから玄人にならないか」と言われ、稽古を重ね、53歳で玄人の免状を取得しました。
能楽師としての仕事は『舞台の仕事』と『指導』に大きく分けられ、中家さんは坂井同門会が宝生(ほうしょう)能楽堂(東京)で行う年4回の公演や伊那能、松本城薪(たきぎ)能(松本市)などで地謡(じうたい)や主役として舞台に立っています。また、地元西箕輪の教室や高遠町、岡谷市などで約30人の生徒の指導に当たるほか、小学校へ出向き体験講座も行っています。昨年33回目を迎えた伊那能についても、父親から実行委員を受け継ぎ、地方では困難とされる定期公演を続けています。「生の舞台を見られることは貴重だと思うし、伊那の皆さんにずっと見てほしい」と想いを話します。
「能の魅力は、様式美。一つ一つの洗練された型や所作から、舞台全体が研ぎ澄まされた雰囲気を醸し出している、そういう日本の文化の″空間を楽しむ〞ようなところが魅力だと思う」と話す中家さん。「能の中には自然を大切にする心やお互いへの思いやりが表現されている。これらは、日本文化の根底に流れる価値観であり、それを次世代に伝えることが使命だと感じている」と能を通じて日本の伝統文化や思いをつなぐことの意義を強調します。
「伊那から新たな能楽師が出てくれると嬉しい」。そのためにも、能の魅力を多くの人々に伝え、次世代への橋渡し役を担います。

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