しごと 産学官で未来を拓(ひら)く~岩見沢から広がるスマート農業と地域社会DX~
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- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道岩見沢市
- 広報紙名 : 広報いわみざわ 2025年11月号
市は、令和元年に北海道大学、NTTグループと〝産学官連携協定〟を締結し、最先端のロボット技術と情報通信技術を活用した〝スマート農業〟の社会実装に向けた各種実証に取り組むことで、高齢化や人手不足、気候変動といったさまざまな課題に向き合い、持続可能な農業と地域社会の実現を目指してきました。
8月から、新たなテーマでスマート農業や※地域社会DXに向けた取り組みをスタートしました。今月は、これまでの歩みと新しい挑戦を紹介します。
○76.1MHz FM HAMANASU JAPAN
市職員が出演して紹介します
11月14日(金)午後5時40分
■岩見沢の農業 背景にある課題
岩見沢の農業は、広い農地を活用する〝土地利用型農業〟が特徴で、道内有数の食料供給地域として稲作を中心に畑作や野菜、果樹、花卉(かき)など、多彩な農業を展開しています。
しかし、全国と同様に経営の中心を担う方々の高齢化が進むなど労働力の確保が難しくなり、農業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
そのような中で「より多く、より安全に、質の高い作物を収穫したい」という農業者の思いを実現するためには、限られた人数でも農地を維持しながら効率的に作業を進める仕組みづくりが欠かせません。
さらに、気候変動や天候不順によるリスクも増大しています。豪雨や猛暑が収量や品質に大きく影響し〝例年通り〟が通用せず、これまでの経験に頼った農業手法では、安定的な農業経営が難しい時代となっています。
市は、こうした課題に対し、全国に先駆けて情報通信基盤を活用した〝先端技術で支える農業〟に目を向けてきました。

■スマート農業の第一歩 ~研究会の設立と基盤整備~
平成25年、地域の農業者を中心に、市やJAいわみざわ、関係機関が連携し〝いわみざわ地域ICT農業利活用研究会〟が設立されました。
地域農業の未来を考え、※ICTを農業に活用するさまざまな検討や協議が重ねられ、市は全国の自治体で初となる※RTK‐GNSSの基地局を整備しました。これにより、位置情報の誤差を数センチメートルに抑えられるようになり、トラクターなどのハンドル操作を自動で行うことが可能となったため、作業効率と精度が向上し、機械の操作に不慣れな方でも安心して農作業に取り組めるようになりました。
さらに、気象観測装置を整備し、地域ごとの気象情報を取得できるようにしたことで、得られた観測データを活用し、作物の生育予測や病害虫の発生予測などができるようになりました。こうした予測情報を基に計画的な農作業を支援するため、JAいわみざわと民間企業が連携し〝農業気象サービス〟を提供しています。
これらは現在、必要不可欠な技術として浸透し、多くの農業者が活用しています。
■産学官連携協定の締結と成果
農業を取り巻く課題の解消に向け〝大学の研究力〟〝企業の技術力〟〝自治体の地域に根差した経験〟を結集し、市と北海道大学、NTTグループは令和元年6月に産学官連携協定を締結しました。
実証の一つとして、最先端の情報通信技術を活用し、無人ロボットトラクターを遠隔地から監視・操作する取り組みを行いました。その結果、有人のトラクターでの農作業と比べ、搭乗者の労働時間や人件費を大きく削減できることが確認されました。こうした成果を地域全体に広げていくため、高価な農機を農業者が共同で利用したり、事業者が所有する農機を貸し出したりする農機シェアリングの仕組みづくりの検討を進めています。
■新たな三つのテーマで進める産学官連携
これまでの成果や課題解決、今後の可能性を実現するために、8月から産学官連携協定の中で新たに三つのテーマを掲げて取り組みを再スタートしました。
01 スマート農業の高度化に向けたデータの利活用
02 データ駆動型農業の実現に向けた通信インフラ整備の最適化検討
03 地域社会DXに向けた課題解決と取り組み
■岩見沢市が目指すまち
農業分野では、無人ロボットトラクターの実用化に向けた取り組みを進めるとともに、各種の膨大なデータを〝収集〟から〝活用〟へつなげる※データ駆動型農業の取り組みを加速させ、さまざまな社会課題に対応した持続可能な農業の実現を目指しています。
また、農業分野だけでなく市民生活全体での地域社会DXを推進し、身近な暮らしの課題を話し合う場として、市民が主体的に関わる形の市民参加型ワークショップの開催を検討しています。さまざまな地域課題を抽出し、暮らしに直結するサービスの実装に向けた検討を行い〝どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会〟であるスマートシティを目指していきます。
■用語解説
○地域社会DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタル技術を活用して地域の課題を解決し、住民の生活の質を高め、地域の持続可能性を確保する取り組み
○ICT(情報通信技術)
インターネットや通信を活用して情報をやり取りする仕組み
○RTK-GNSS
地上に設置した基地局と人工衛星を用いた測位システムを組み合わせ、誤差を数センチメートル以内に抑えた高精度な位置情報を得られるシステム
○データ駆動型農業
気象、土壌、作物の生育、農作業、販売など、農業に関わる多様なデータを収集・分析し、その結果に基づいて作業や経営判断を行う農業
問合先:情報政策課(有明町南1自治体ネットワークセンター3階)
【電話】25-8004
