しごと 産学官連携協定を延長 スマート農業の新たなステージへ

9月3日、市、北海道大学、NTTグループの代表が集まり、これまでの産学官連携による成果を振り返るとともに、新たなテーマでの取り組みを継続することについて、農業だけでなく市民生活全体を視野に入れた今後の展開や意気込みを語りました。

■これまでの実証成果を踏まえ、産学官連携協定の延長で広がる新たな取り組みに期待する思いを教えてください
松野市長:産学官連携協定が延長され、新たな取り組みがスタートできることに感謝しています。市内では、スマート農業を効率的に実践できる土地基盤整備事業が行われています。また、農業生産現場が抱える課題を解決するために農業者自らが農業にICTを取り入れた実証や普及展開を行う研究会をつくり、今では会員が300人を超える組織に発展しています。
農業就業人口の大幅な減少や少子高齢化が進行し、より生産性向上や効率化などが求められる中、やはり岩見沢はスマート農業をしっかり取り組むことが重要であり、研究会の存在も非常に大きいと思います。岩見沢の強みやフィールド、情報通信基盤を農業だけでなく市民生活のさまざまな分野に生かしていきたいと考えています。

野口さん:この5年間で岩見沢は日本を代表するスマート農業の拠点になりました。岩見沢での取り組みを国務大臣や国会議員など多くの方に見てもらい、スマート農業が今どこまで来ているのか、今後どう発展するのかを知ってもらえたのはとても大きな成果だと思います。
今後は実証から実装へと進める時期です。北海道大学では、仮想空間に水田を再現して作物の成長をシミュレーションする技術の研究を行っています。土壌や気象などのさまざまなデータを組み合わせることで、作物の生育や収量といった品質予測はもちろん、仮想空間上に作ったバーチャルファームでロボットの作業計画を立てることが可能となります。新規就農者でもそれらのデータを基に最適な営農計画を立てられる、これが次世代の農業の姿だと考えています。

茂谷さん:6月に長野県から北海道に着任しましたが、長野県に居た当時から岩見沢市はスマート農業の先進地として有名で、そのプロジェクトに関わることができて非常に光栄です。これまでの取り組みを振り返って、現場の農業者の声を直接聞けたことが大きな学びでした。今後の取り組みのキーワードは〝サスティナブル(持続可能な)〟だと思います。これからの時代、スマート農業は絶対に必要な技術です。さまざまなデータの取得と活用を通して、岩見沢市でこれからも農業がしっかりと続けられる仕組みが重要です。通信やデータを農業以外にも広げ、持続可能な取り組みにしていきたいと思います。

上中さん:NTTドコモビジネスでもNTT東日本と同様に一次産業への貢献に向けて力を入れた活動を行っています。無線通信の知見を生かし、この産学官連携の取り組みを通して、市民生活を豊かにというテーマには強く共感します。デジタルを活用した農業とまちづくりの双方に地域全体を支えるソリューションを提言するなど、引き続き貢献していきたいと思います。

■これまでの実証成果を踏まえ、これからの農業に必要となるものはありますか
野口さん:人口減少や少子高齢化により、今後ますます農業者が減っていく見込みで、現状のままでは生産性の維持すら難しくなります。これからは農業機械やデータを所有するのではなく、サービス業者が提供して、農業者は必要に応じて利用できるような仕組みが必要だと考えています。

■なるほど。必要な農業機械をすべて自前でそろえなくても作業できるようになれば、農業へのハードルが下がりそうですね
松野市長:スマート農業に取り組む農業者の中には、スマート農機を使ったらもうやめられないと言っている方がたくさんいます。こういったスマート農業が広まってきている背景もあって、農業を始める方も一定程度増えてきています。

茂谷さん:新規就農者もそうですが、やはりスマート農業は、特に若い方が関心を持つことが多いと感じています。こういった方々をサポートする仕組みやデジタル人材の育成といった仕組みも必要となりますね。

松野市長:まさにそういった仕組みや取り組みが必要だと思います。岩見沢では、研究会がスマート農機のマニュアルを作成したり研修会を開催したりするなど、さまざまな形でサポートを行う体制が整っているほか、農業者同士でもノウハウを共有し合うなど、互いに支え合う環境ができているため心強く感じています。
岩見沢は物理的な環境、農業者の意欲、そして産学官の連携という三つの強みを持っています。これを最大限に生かし、どこでも誰もが便利で快適に暮らせる地域社会を目指したいと考えています。

市は、これまでの産学官連携による取り組みを通して、スマート農業の先進地として確かな歩みを進めてきました。今後は、その先端技術の実用化をさらに進め、地域全体でデータを活用しながら、持続可能で魅力ある農業と誰もが便利で快適に暮らせる〝スマートシティ・いわみざわ〟を目指し、未来を見据えた挑戦を市民の皆さんとともに進めていきます。