文化 文化財のひろば・シリーズ181

■遠くまで運ばれた石
縄文時代の人々は、石を加工して様々な道具として利用しており、森町の遺跡からも多種多様な石器が出土しています。その中でもひと際目を引くのは、黒く輝く黒曜石や少し透明がかった緑色の石です。
星のかけらに例えられることもある黒曜石は、町内の遺跡から黒曜石製の石器や欠片が出土します。ガラス質で、割ると鋭い切れ味を持つため、多くの場合は矢じりやナイフ、皮なめしの道具などとして用いられており、尾白内貝塚では人の形を模した石偶も出土していて、人の生活と深く関わる石だったのだろうと考えられます。黒曜石は主に道東の遠軽町や置戸町、上士幌町あるいは道央の赤井川村で採れる石であり、町内の遺跡から出土する黒曜石はこれらの土地から運ばれてきたものです。
透明がかった緑色の石は、翡翠(ヒスイ)と呼ばれ、現在も宝石として利用されることがあります。その感性は縄文時代も変わらなかったようで、鷲ノ木4遺跡から出土した翡翠は穴があけられ、装飾品として利用されていたと考えられます。翡翠も森町周辺では採ることができず、新潟県の糸魚川周辺で採取され、森町まで運ばれてきています。
どちらの石も簡単に手に入るものではありませんが、人や地域との交流を通して持ち込まれたことでしょう。黒曜石や翡翠を見ると、様々な苦難を乗り越えた縄文時代の人々の活力が感じられます。
森町遺跡発掘調査事務所で展示していますので、ぜひご覧ください。