- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道比布町
- 広報紙名 : 広報ぴっぷ 2025年5月号(800号)
■高校受験の変化~受験準備は7年生から
近年、高校入試の状況が劇的に変わっています。特に顕著なのが、推薦入学の増加です。
かつて公立高校では、多くの生徒が3月上旬の一般入試に臨むのが主流でしたが、最近は推薦入学の枠が大幅に増え、年によっては学年の約7割の生徒が推薦入学で高校へ進学する状況です。
一般入試が主流の時代は、中学3年生の部活動引退後から猛勉強を始めるという光景もありましたが、推薦入試では中学校3年間の評価が重視されるため、その時期から頑張っても間に合わないということになります。
一見、推薦入学は「苦しい受験勉強の負担が減る」ように思われますが、実際は3年間の学校生活すべてが評価対象となるため、より早い段階から準備が必要です。
こうした変化に対応するため、比布中央学校では、後期課程の教員が前期課程の生徒を指導したり、7年生の授業を前期課程の教員が担当することで、勉強の引き継ぎを円滑にするなど、義務教育9年間の連続性を大切にしています。:さらに、町と包括連携協定を結んでいる「練成会グループ」の協力のもと、5年生以上の保護者を対象に最新の受験情報を共有する場を設け、家庭と学校が一体となって子どもたちを支えています。
他にも、9年生の修学旅行報告会に5・6年生が参加し、進級後の自分をイメージできるようにしたり、合唱交流会で9年生の圧倒的な表現力に触れる機会を設けるなど、子どもたちが将来を見据え、自分の成長を重ねていける環境づくりを進めています。
これらの取り組みは、義務教育学校だからこその強みといえます。
■子どもの成長のために得意を持ち寄る
近年、「教員の働き方改革」が報道されることがありますが、比布町では、教員の働き方改革を強調することはしません。
なぜなら、人口減少が進む現代において、どの業界でも人手不足や情勢の急激な変化など、それぞれに大変な苦労があるからです。教員だけが特別に過酷とは言えません。
大切なことは、どの仕事にも苦労や困難さがあるのだという意識を持ち、感謝と敬意を持って接すること。働き方改革は、教員だけでなく全ての働く人に必要なことです。
また、得意なことや苦手なことは人それぞれです。当たり前のことですが、人から学ぶ時には、その分野が得意な人から教わるのが一番深く学べる方法です。
公立学校の教員は、決して特別な経験や訓練を受けた人が就く職業ではありません。当然、知らないことや苦手なこともたくさんあります。
比布中央学校では、田植え・稲刈り体験をはじめ、さまざまな場面で町民や専門家の皆さんの力を借りて学びの場を広げています。
これは決して、教員の働き方改革が目的ではなく、「得意な人から学ぶ」経験をつくることが目的の取り組みです。
こうした活動を通じて、子どもたちは、家庭や他の学校では得がたい貴重な経験を積み重ねています。その背景には、皆さんが「自分の得意」を持ちより、子どもたちのために力を貸してくださっていることがあります。
皆さんのこうしたご協力に、心から感謝いたします。
大人が得意を持ち寄り、寄ってたかって経験の場をつくる。それが、比布中央学校が目指す姿です。
■これからの比布中央学校
これまで、比布中央学校の目指す姿や取り組みの一部を紹介してきました。
もちろん、全てが完全なものではありません。現在の取り組みはあくまで「子どもたちの成長を促す」ための手段であり、その手段が本来の目的に合っているかを、常に確認していく必要があります。
また、社会が大きく変化し、子どもたちに求められる経験が多様化する中、町民や専門家の皆さんのご協力がこれまで以上に必要な場面が増えていくことも想定されます。
「子どもは地域の宝」と言われますが、忙しい毎日のなかで、自分の子ども以外のために時間を割くというのは、簡単なことではありません。
それでも、子どもたちの成長には多くの経験が必要です。どうか無理のない範囲で構いませんので、引き続き皆さんの経験や得意なことを、比布の子どもたちにお伝えいただき、社会に羽ばたくお手伝いをいただきますよう、お願いいたします。
●比布中央学校開校当時を振り返る
○比布中央学校 初代校 長三浦秀也(比布中第32回卒業生)
令和3年に比布中学校校長、令和4年から2年間、比布中央学校初代校長を務める。退職後、今年4月から町教委の「生涯学習推進アドバイザー」に就任。白寿大学などの運営を担う。
以前は「小学校から中学校へ送り出す」という感覚でしたが、校舎が一つになり「義務教育学校」となったことで、教員同士の情報共有や子どもへの関わりがぐっと深まりました。前期課程を教えていた教員が進級後の様子を自然と気にかけたり、逆に後期課程の教員が前期の授業を見学する姿もありました。義務教育9年間を通して子どもを見守れるのは、大きな変化でした。前期課程と後期課程、渡り廊下でつながる距離感も、ちょうど良く感じています。
○比布町教育委員会 教育長 北川範之
平成23年から4年間、町立中央小学校校長を務め、定年退職。30年10月に比布町教育長に就任。教員時代の豊富な経験と知見を生かし、比布町の小中一貫教育を推進。
小・中学校が分かれていると、子どもの成長を切れ目なく支えることが難しくなります。義務教育9年間をどうつなぐか考えたとき、比布町では、一人の校長のもと一つの組織として子どもに関わるのが望ましいと判断し、「義務教育学校」へ移行することを決めました。最初は教職員の中にも戸惑う声がありましたが、「子どもの成長」を最優先に考え、話し合いを重ねる中で理解が進み、開校に向けて教職員が一丸となって取り組みました。