くらし 男女共同参画コラム

■連載174
▽仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

早いもので今年も残り1か月となりました。本格的な冬の到来とともに師走の声を聞くと、なぜか気ぜわしくなります。ただし十分に健康にだけは注意したいものですね。
さて、コインの裏表と言う言葉をよく耳にします。たとえば、人手不足すなわち売り手市場を表とするならば、裏は離職問題とりわけ若年層の早期離職問題でしょうか。キャリアアップやキャリアチェンジも人口に膾炙し、転職市場も活況を呈していると言っても過言ではありません。もはや「一社懸命」は死語か。退職に対する心理的ハードルは確かに下がっていると、教員の退職に頭を悩ませている私も、そう考えます。
ここで退職に関する調査結果の一つをご紹介しましょう。「退職に関する心理的ハードルは下がっているか」との質問(n=585)では、20歳代、30歳代、40歳代、50歳代のどの世代も「下がっている」との回答が、90パーセント以上を占めました。20歳代では96・5パーセントにも達しています。私が驚いたことは、40歳代も96・5パーセントだったことです(Job総研「2025年退職に関する意識調査」(2025年3月))。日本型組織ではミドル層最強説を信じて止まない私にとっては衝撃的でした。仕事人生における重要な画期であるミドルとて、退職は身近な問題となっていることの証左とも言えましょう。「働き甲斐改革」は待ったなし。
でもやはり、20歳代の離職防止は喫緊の課題ではないでしょうか。如何に新人や若手の職員・社員を職場に定着させるかという問いに対して、もちろん快刀乱麻を断つかのような答えなど、私は持ち合わせていません。ですが、人材育成に向けて示唆に富む調査結果があります。一般社団法人日本能率協会が新人社員向け公開教育セミナー参加者に行った調査(n=657)です。「新人がこれから仕事をしていくうえで、強化したい点」として、学習能力(他者や経験から学ぶ力)43・2パーセント、目的を設定して確実に実行する力37・4パーセント、物事に進んで取り組む力35・3パーセント、自分の意見を分かりやすく伝える力33・6パーセントが、上位を占めました(「2025年度新入社員意識調査」(2025年8月))。
上司や先輩は、新人がこれら強化したいと考えている力を伸ばすことに積極的に関与することが必要でしょう。もし、新人さんがこれらの力が強化できたと実感して、多少なりとも成長の手ごたえを掴むことが出来たならば、それがワーク・モチベーションとなるのではないでしょうか。一歩ずつ仕事において歩み続けることの意味を理解させて納得させていくことが、上司の力量・手腕と言えるのではありませんか。そして、その力量・手腕の土台となるのは人間性であり、部下との信頼関係を築いていくうえでは必要不可欠です。
「入社前Z世代が求める理想のリーダー像」として、「人当たりが良く、誰とでも良好な人間関係を築くリーダー」が首位に挙げられていました(アルー(株)コンセプトデザイン部「2023年度新入社員レポート」(2023年5月))。あくまでも私見ながら、八方美人や全方位外交などという言葉は、さほど良い意味では使用されないでしょう。ですが、人には丁寧に接することは重要です。人によって対応が変わる上司は信頼度が低い。新人の経験学習サイクルを順調に回していけるように支援できる人望ある上司が、求められるのでは。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。