くらし トガリネズミラヴァ― 六田晴洋の私たちのご近所さん

VOL.32 シシャモと鳥たち

先日、やまかんさんでおいしいシシャモをいただきました。初冬は白糠の川にシシャモが産卵のためにのぼってくる季節。シシャモはサケのように川で産まれ海で大きく育つ魚ですが、私は白糠に住むまでそんなことは知りませんでした。せっかく白糠にいるのだから、生き物としてのシシャモを深く知りたい、撮影してみたいと思い、今年挑戦することにしました。

「思い通りにいかなくても」
撮影の第一歩は、予定を空けておくこと。私は今年のシシャモの時期に予定が入らないよう、さまざまなことを調整しながら一年間生活してきました。これが案外難しく、時に薄情者のレッテルを貼られるリスクを伴います(笑)。そしていよいよその時期の到来。ところが…川が濁って水中が見えません。シシャモがいるのかどうかさえわからないほどです。9月の豪雨で土砂が川に流れ込んだことが影響しているのでしょうか。それでも微かな望みを胸に、毎日川の透明度をチェックしに通いました。しかしその苦労も虚しく濁り続ける川。一年も待ったのに、まさかスタートラインにさえ立てないとは。
ところが、その中で気付いたことがありました。いつ行ってもヤマセミがいるのです。時々、タンチョウも来ます。そして、その鳥たちが捕らえた魚を見ると、なんとシシャモです。人間には全く見えないのに、鳥たちはいとも簡単そうにシシャモを次々と捕まえるのです。しかもシシャモだけを。ここには他の魚もたくさんいるのに、明らかシシャモと鳥たちに選んでいます。ヤマセミやタンチョウは魚を丸飲みするので味はわからないと勝手に思っていましたが、人間とは違う味の感じ方があるのでしょうか。
気付けば鳥たちの面白さにすっかり引き込まれていました。思い通りにはいかなくても、やっぱり自然って面白い。でも来年こそ水中のシシャモを撮ります。

○PROFILE
六田晴洋 ろくた はるひろ
1986年生まれ。
2021年に白糠町へ移住。
大学卒業後、フリーランスのカメラマンやディレクターとして野生動物や自然風景を撮影している。
【URL】https://rokutaharuhiro.com