くらし トガリネズミラヴァ― 六田晴洋の私たちのご近所さん

VOL.33 アザラシを撮りに湖へ

ベーリング海やオホーツク海などを南下して冬の北海道にやってくるゴマフアザラシ。流氷の上で出産と子育てをして、春、流氷と共に大部分のゴマフアザラシは北へ帰ります。そんなゴマフアザラシが多く集まる場所が、海とつながっている能取湖とサロマ湖です。凍った湖面は貴重な休憩場所。そんなシーンを撮影するため、私は年末に湖へ向かいました。

■ひと晩で変貌した湖
例年、クリスマス頃に湖面が凍るはずの能取湖とサロマ湖。ところが到着時、ほとんど凍っていませんでした。もちろんアザラシの姿もありません。ここにも温暖化が影響しているのでしょう。アザラシの研究者からは、この冬は凍らない可能性さえあると言われました。さてどうしたものか…。しばらく様子を見ることにしましたが、3日経っても湖が凍る気配はありません。無情にも宿泊費だけが積み重なっていきます。そして、この日ダメならいい加減帰ろうと思っていた4日目。期待せずに湖を見に行ったらなんとこの光景(写真)。前日とは全く違う湖の姿に驚きました。

■風が作ったアザラシの休憩場所
広範囲の水面を覆う氷と、その上で寝転ぶ数百頭のゴマフアザラシ。この氷はなぜ突然現れたのでしょう。一晩でこれだけ一気に湖面が凍ることは考えにくいです。よく見ると、氷と氷の間に水面が見えています。おそらく氷はここで凍ったのではなく、流されて集まったもの。アザラシを撮りに湖へこの日は猛烈に風が強く、立っているのも大変なほどでした。その強風によって、湖のいろいろな場所で凍っていたわずかな氷が、風下であるこの場所に集結したのでしょう。自然や動物の動きを予測することの難しさと、だからこそ簡単に諦めてはいけないということを改めて思い知りました。思い通りにいかないことがほとんどの野生生物の撮影は、時に精神の修行です。

○PROFILE
六田晴洋 ろくた はるひろ
1986年生まれ。
2021年に白糠町へ移住。
大学卒業後、フリーランスのカメラマンやディレクターとして野生動物や自然風景を撮影している。
【URL】https://rokutaharuhiro.com