- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県双葉町
- 広報紙名 : 広報ふたば 2025年12月 災害版 No.175
■ダルマに願いを 伝統息づく風物詩
双葉町の冬を彩る「ダルマ市」は、300年もの歴史を持つとされる伝統行事。文献にその名が登場するのは明治時代後期からです、その双葉町の前身である旧長塚村で行われていた「初市」にさかのぼります。
かつて双葉郡の各地では、年末から年始にかけて縁起物や日用品を扱う市が開かれていました。当時の記録によると、初市は旧暦の1月13日前後に開催されていたようです。長塚村と新山町が合併して標葉町のちの双葉町が誕生した後も、しばらくは旧暦に沿って行われていましたが、1960年(昭和35年)に双葉郡町村会で正月・盆の行事を新暦で行うことが決定。翌年からは新暦に合わせて開催されるようになりました。
1970年代以降は、ダルマや日用品の販売に加え、地域の文化を感じられるイベントも多数開催されるようになり、町民に親しまれる一大行事へと発展。今では双葉町を代表する冬の風物詩として、広く知られるようになりました。
■どうしてダルマは縁起がいいの?
その丸みを帯びた姿にどこか愛嬌を感じる方も多いかもしれません。一方でダルマは「七転び八起き」の精神を体現する力強い縁起物。倒れても、また起き上がる姿は困難に立ち向かう人々の心を励まし続けてきました。
ダルマの起源は、室町時代に中国・明から伝わった木製人形にあるといわれています。モデルとなったのは、禅宗の開祖として知られる達磨大師。日本では縁起物として広まり、今では全国各地でさまざまな形のダルマが見られるようになりました。
さまざまな形のダルマが生まれましたが、倒れてもすぐに起き上がれる姿が特徴です。これが「七転び八起き」の精神に通じるとして、古くから人々に希望と勇気を与える存在となってきました。また、赤く塗られた全身は魔除けの意味も持ち、地域によっては厄除けとして飾られることもあります。
そして、ダルマといえば「目入れ」の風習。願い事をする際に片目を入れ、成就したらもう片方を入れるという習慣は、選挙の当選者がダルマに目を入れる光景などでもおなじみです。ただし、ダルマの目の有無は地域によって異なり、福島県の三春ダルマや宮城県の松川ダルマなどは、最初から両目が描かれているのが特徴です。
地域の文化とともに歩んできたダルマ。その姿には、願いを託す人々の思いが込められています。
■ダルマの系譜
かつて双葉町のダルマ市では、いわき地方の「平ダルマ」と富岡町の「富岡ダルマ」が主に並び、地元の人々に親しまれていました。しかし1970年代に、それらを手がけていた職人たちが相次いで引退・廃業したことで、三春ダルマや白河ダルマなど、遠方の産地から仕入れたダルマが中心となっていきました。
そういった中で、長塚地区の事業者たちによる「長塚共栄会」が地域の活性化を願い、白河だるま本舗の協力のもと「ふたば福ダルマ」を製作。双葉町のダルマ市に新たな彩りを添えました。東日本大震災の影響を受け長塚共栄会の活動が厳しくなりましたが、関係者の協力もあり、このふたば福ダルマはダルマ市で販売が継続されています。
さらに、双葉町ならではのオリジナルダルマが登場したのは1990年代のこと。1994年(平成6年)、JAふたば女性部の手によって「ふたばダルマ」が誕生しました。白河のダルマ職人のもとで研修を受けた女性部の皆さんが、心を込めて作り上げたこのダルマには、町章をあしらったものと、太平洋をイメージして縁を青く塗ったものの2種類があります。
■ダルマが7色の理由は・・・
双葉町のダルマは色が豊富。馴染み深い赤や白以外のダルマも作られています。

町の観光協会によるとこれらの色には双葉町の復興と町民の願いを込めて作られていると言われています。たとえば、受験生には白、商売をされている方には黒、家族の健康を願うなら緑など、それぞれの願いに合わせて選ぶと良いでしょう。自宅に飾るのはもちろん、贈り物にもぴったり。あなたはどの色を選びますか?
■ダルマ市を彩るグルメ
ダルマ市のもうひとつの楽しみといえば、地元の味が集まるグルメ。地元商店が丹精込めて仕上げた逸品や、有志の団体が復興への想いを込めて提供する温かな料理が並びます。
湯気の向こうに広がるのは、どこか懐かしくて、思わず笑顔になるような味ばかり。この日だけの“特別な味”を、ぜひ会場で味わってみてください。
このうち「幸福焼き」は双葉町商工会が開発したスイーツで、見た目ほっこり、味も心温まる一品です。
「幸福焼き」は、地元の人々の思いが込められたオリジナルグルメ。名前の通り、食べる人に“幸福”を届けたいという願いが込められています。
