くらし ―地域医療の要として― 新小山市民病院 佐田 尚宏 新理事長・病院長が語るビジョンとは

今年の4月に、市内の医療の中核を担う新小山市民病院において前任の島田 和幸(しまだかずゆき)先生がご勇退され、新たな理事長・病院長として佐田 尚宏(さたなおひろ)先生が就任されました。
今回は佐田先生に病院、そして地域医療の未来などをお伺いします。

◆profile
佐田 尚宏(さた なおひろ)
1960(昭和35)年1月21日生まれ。65歳。
滋賀県出身。
趣味は週1回のテニスとゴルフ。

▽専門分野
胆膵外科、内視鏡外科

▽学歴及び主な職歴
1984年 東京大学医学部 卒業
1994年 東京大学医学部第一外科 助手
1994年 Dusseldorf大学医学部消化器科 客員研究員
2000年 自治医科大学消化器・一般外科講師
2007年 自治医科大学鏡視下手術部、消化器・一般外科教授
2015年-2022年 自治医科大学附属病院 病院長
2021年 自治医科大学外科学講座 主任教授
2025年 地方独立行政法人 新小山市民病院 理事長・病院長

◆interview
▽受け取ったバトン
今年3月末に、島田先生が理事長・病院長職をご勇退され、4月より佐田先生が、新小山市民病院としては2代目の理事長・病院長になられました。
「島田先生が13年の歳月をかけて作られてきた新小山市民病院。外科や内科などの診療科はもちろんのこと、医療安全・感染予防などの管理部門も活性化していて、とても素晴らしいなと感じました」と佐田先生は話します。
団塊世代が全員75歳以上になり高齢者の人口が増えることで、様々な問題が発生する“2025年”、高齢化がピークに達する“2040年”。医療分野においても例外ではなく、多くの変革が求められます。
「今までは、病院として機能を高めるフェーズでした。しかし、私が求められているのは、その先です。2040年に向けて、高齢化や人口減少をイメージしながら、医療ニーズと供給体制、そこで従事する医師数・看護師数まで正確に計算する。その上で、地域の医療を支える為、自治医科大学や地域の病院、医師会の皆さまと共に新たな仕組みを作ることが必要です」
“対話と共創”を掲げた島田先生の意思を受け継ぎ、佐田先生は未来を見据えています。

▽第4期中期計画
今年4月から、佐田先生の理事長・病院長の就任と共に始まった新小山市民病院の“第4期中期計画”。この計画には、別館の建設(右写真イメージ)を伴う手術室の増室、歯科口腔外科の新設、産科の再開など、新小山市民病院の近い未来が描かれています。
「手術室を2室増やすと、現状に加えて、年間約1,000件の手術が可能となります。病床との兼ね合いも考えて、患者様の負担を軽減し日常生活に早期復帰できるように低侵襲外科手術の推進などを進めていきます。また、地域の病院との連携も強化し、人材交流などを通して小山エリア全体での医療サービス向上を進めたいと考えています」と佐田先生はお話してくださいました。
※写真は本紙をご覧ください

▽働き方改革とその在り方
佐田先生は、自治医科大学附属病院長時代から病院の働き方改革を提唱され、第4期中期計画にも、働き方改革について記されています。
「働き方改革は絶対必要です。病院の果たすべき役割は質の高い医療を安全・確実に提供することです。それを無理して達成することは、持続可能とは言えません。普通の人が普通に働いて達成できるシステムにしなければなりません。そのためには、医療ニーズと業務フロー、人員と配置を見つめなおし、整理して、効率化していくことが大切です」
新小山市民病院は、さらなる効率化の一助として、最先端手術支援ロボット“ダヴィンチ5”の導入を予定しています。医療スタッフと患者さん双方の負担軽減につながることが期待され、導入されれば、栃木県内初となる見込みとなっています。

▽モチベーションの源泉
佐田先生が医師を目指したのは、中学生の時。そこから、東京大学医学部に進学し、医師になります。年齢を重ねるにつれ、徐々にマネジメント・経営側の仕事になっていきますが、そこで目線が変わっていったと言います。
「外科医としては、技術を上げ、手術を成功させ、患者様に元気に帰っていただくことが全て。だからこそ、より技術を上げることが大切でした。徐々に経営側の仕事を行うようになってからは、診療科内だけでは行えない改革を行えるやりがいを感じています。例えば先ほどの働き方改革なども、外科で行うだけでは限界がありますが、病院全体、地域全体、県全体で行えれば波及効果も広くなります。現在の医療現場は過渡期に差し掛かっています。その改革に携わることができるのが、今のモチベーションの源ですね」と佐田先生は語ります。
佐田先生の改革への熱いモチベーションを原動力に、新小山市民病院の第2章がこれから始まっていきます。