子育て 子育て家庭を地域で支える~孤立を防ぎ、つながりを取り戻すために~

■〔特別対談〕さくら市長 中村卓資×養徳園理事長 福田雅章
核家族化や地域のつながりの希薄化により、子育て家庭が孤立してしまうことがあります。子育ての不安や悩みを親だけで抱え込まないように、地域全体で子育て家庭を支え合う環境づくりが求められています。今回は、中村市長、子育て支援に長年携わる社会福祉法人養徳園の福田理事長、こども家庭センターの岡﨑家庭相談員の3名に、子育て家庭が抱える課題や今後求められる取り組みについて語っていただきました。

▽最近の子育ての傾向について、どのように感じていますか?
福田:以前と比べ、親に対する「ちゃんと子育てをしなさい」というプレッシャーが強くなっていると感じます。私の世代では、そこまで干渉されずに育った印象がありますが、現在は違います。
岡﨑:真面目な親の中には、そのプレッシャーを受け、子育てを苦しいものと感じてしまう方もいますね。
福田:子育てには親だけでなく、子どもを取り巻く大人の総合力が重要です。
中村:それは重要ですね。私も子育てをしているときには、地域の皆さんに大変支えられたことを覚えています。しかし、最近では、身近に頼れる人がいない家庭が増えていると聞きます。大人同士のつながりがどんどん希薄になっているのではないでしょうか。
岡﨑:私も多くの家庭に関わる中で、地域から孤立している親が増えているように感じます。
福田:大人同士のネットワークが弱くなることで、現在の子育て家庭は、一昔前の子育て家庭とは異なる課題を抱えることが増えています。

▽具体的にどのような課題がありますか?
福田:現代社会、特に人口が増加している地域では、頼れる近親者が近くにいないケースが増えています。そのため、例えば緊急時に子どもを少しの間だけ預けることができずに困ってしまうということが起こります。また、「褒めて育てる」という考え方が広まる中、叱ることに躊躇する親も増えています。叱ることが虐待と誤解されるのではないかと悩んでしまうわけです。
岡﨑:子育てに完璧さを求める親が多いように感じます。完璧にできないときに、自分で自分を苦しめてしまう親は少なくありません。子育てに困ったときに気軽に相談できる環境が必要です。
中村:子育て家庭に、こども家庭センターをはじめとした気軽に相談できるところがあるということを周知していきたいですね。

▽これらの課題に対して、どのような対策が必要だと考えますか?
福田:子育ては親だけの責任ではありません。地域全体で子どもを育てる環境づくりが重要です。大人同士のネットワークを再構築し、互いに支え合える関係性を作ることが、現代の子育て支援には不可欠だと考えています。
中村:子育てを親だけで抱え込まなくていいというメッセージを発信し続けることが大切だと考えます。また、助けを求められる場所を増やしていければと感じています。
福田:加えて、支援を求めることは恥ずかしいことではありません。すごいことだと思います。現在は、情報が溢れていて、子育てについてもすぐに調べることができる。しかし、子育てに正解はない、マニュアル通りに子どもは育たない。調べたとおりにできずに困ってしまったとき等、自分だけでは解決できないことを相談できるということは本当に素晴らしいことなんです。
岡﨑:公的な支援以外の支援も重要です。地域の中で子育て経験者が力を発揮できる仕組みづくりが求められますね。

▽市民の皆さんに向けてのメッセージをお願いします
中村:子育て家庭に対して、ちょうどいい「おせっかい」をしてみてください。ちょっとした声かけや気遣いが、大きな支えになります。
福田:地域には潜在的に子育てに課題を抱えている家庭があります。そうした家庭が誰とも繋がれなかった結果、課題を抱えきれなくなってしまう事例に遭遇したことがあります。そうなる前に、そうした家庭が誰かと繋がるためにも、子育てについて、もう少しおせっかいをしてもいいのではないでしょうか。地域全体で子育てを支える意識があると、素晴らしいと思います。
岡﨑:子育ての楽しさを感じられるような周囲のサポートが重要です。ニコニコとした表情のパパママが増えるよう、みんなで支え合いましょう。

■こども家庭センター家庭相談員 岡﨑(おかざき)かおり
家庭相談員の岡﨑さん(15年目)
豊富な経験を活かし、日々相談者に寄り添う。
「お気軽にご相談ください。一緒に考えましょう♪」

■養徳園理事長 福田雅章(ふくだまさあき)
市内にある社会福祉法人養徳園の理事長。
全国児童家庭支援センター協議会会長や栃木県児童養護施設等連絡協議会会長など、数々の役務を務めながら、児童福祉の向上のためさまざまな活動に取り組んでいる。