健康 健康情報コラム

■ナトリウムとカリウムのこと
埼玉県立大学 保健医療福祉学部健康開発学科 廣渡祐史

私は栄養学、特に動脈硬化の専門家です。世界の栄養に関する情報を仕事柄日常的に検索しています。昨年10月、日本高血圧学会から「尿のナトリウム/カリウムの比」を検診などで測定し、高血圧の予防・管理、さらには脳卒中、心臓病、腎臓病を予防しようという提言が発表されました。提言には、「尿のナトリウム/カリウムの比を、健常な日本人で2未満を最適な目標値に、4未満を実現可能な目標値に設定し、全国の医療機関で活用を期待する」と書かれました。現在、少しずつ検診項目に「尿のナトリウム/カリウムの比」を加える施設が増えています。略して「尿ナトカリ比」と呼ばれます。
ナトリウムは食塩に含まれ、摂取が多いと高血圧となります。カリウムは野菜や果物に多く含まれ、ナトリウムの排出を促すことが知られています。とは言っても、カリウムをとれば、食塩の摂取量を減らさなくてよいということではありません。厚生労働省が公表した食事摂取基準2025年版を見ると、日本人の食塩に換算したナトリウムの摂取量は、世界保健機構のガイドラインの推奨値の約2倍の10g/日程度と過剰摂取でした。ヨーロッパはパンが主食ですが、パンには食塩が比較的多く含まれています。イギリスの医学者と栄養学者が協力して「塩と健康に関する国民会議」を設立し、ベーカリー業界に働きかけ、食パンの食塩濃度を約20%引き下げたところ、イギリス人の血圧は下がり、心筋梗塞や脳卒中の死亡率が40%減少したと報告されました。
食塩の摂取量を減らすために、多くの代用食塩が売られています。代用食塩は、その半分程度を食塩でなく塩化カリウムにしています。腎臓に疾患を持つ人は、ナトリウムだけでなくカリウムも制限しなければいけない場合もありますので、専門の医師などに相談してからご使用ください。
私はおいしい食塩がいいので、ピンク色のヒマラヤ岩塩を食べています。