健康 わたしたちの健康「緊急避妊薬(アフターピル)」

朝霞地区医師会/牧田和也(まきたかずや)

緊急避妊とは、現時点で妊娠・出産を希望しない女性が、避妊対策なしで行った性交の後やいずれかの避妊対策は行ったもののその対策が不十分だった性交の後に、緊急回避的に妊娠を阻止することを言います。
緊急避妊の方法自体は複数ありますが、わが国では「緊急避妊薬(アフターピル)」と呼ばれている薬を内服する方法が最もよく選択されています。この緊急避妊薬(アフターピル)は、2011年に厚生労働省より正式に認可された薬ですが、通常の経口(けいこう)避妊薬(低用量ピル)と同様に、医療保険の適応にはならず自由診療の薬という扱いになります。婦人科がある病院ないしクリニックに受診すれば、処方してもらえます。服用方法は極めて簡単で、性交をしてから72時間以内のできるだけ早い時期にこの薬を1錠服用するだけです。これを服用することで、希望しない妊娠を阻止できる可能性はかなり高まりますが、それでも100%回避できる訳ではありません。また、低用量ピルと異なり、わずか1錠のみの服用ですので、重い副作用はほとんどありませんが、低用量ピルにも認められることがある服用後の吐き気ないし嘔吐(おうと)がみられることがあります。特に服用後2~3時間以内に嘔吐した場合には、避妊効果が発揮されない可能性がありますので、再度同じものを服用するかあるいはほかの方法に変更する必要があります。処方してもらった医療機関に相談をしてください。
女性には、早ければ10歳前後から最長で50代半ばくらいまでの約40年間、周期的(順調な場合は28~30日ごと)に5~7日間くらい持続する子宮からの出血がみられることは皆さまよくご存知のことと思います。この現象を医学的には「月経(一般には生理と呼ばれています)」と言いますが、月経を含めた1か月ごとの周期的な変化(月経周期)は、妊娠が成立したときの準備を行うために女性だけに与えられた機能なのです。
月経周期が28~30日と順調な場合、月経の初日からおおよそ10~14日目くらいに、お腹の中にある卵巣という臓器から1個の卵子が卵巣の外に出ます(排卵)が、この排卵の前後の時期が最も妊娠しやすい時期と言えます。もちろん、それ以外の時期であっても、時に月経周期が乱れることがありますので、絶対に妊娠しないとは言い切れません。したがって、アフターピルは排卵前後だけでなく、月経周期のどの時期であっても、性交をしてから72時間以内であれば、服用する意義は十分にあると言えます。
アフターピルの服用後は、次の月経が確認できるまでは、できれば性交を控えるとともに、予定の時期にいつも通りの出血量と期間にわたって月経が来たことをしっかり確認してください。もしも、月経が予定の日より1週間以上遅れたり、予定の時期であってもいつもと異なる出血の仕方や月経痛とは異なるお腹の痛みなどがある場合には、妊娠の有無をしっかり確認するため、必ず医療機関を受診するようにしてください。先にも書きましたように、アフターピルを服用しても、100%妊娠を回避できる訳では決してありません。

最後に、現在一部の地域で試験的に運用されていますが、将来的にはアフターピルは一般の薬局での購入が可能になるかもしれません。ただ、そのような時代になっても、服用しただけで安心せず、その後の月経がいつも通りに来たことをしっかり確認することを忘れないようにしてください。

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