- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都青梅市
- 広報紙名 : 広報おうめ 令和7年10月15日号
■重要文化財 宝寿丸黒漆鞘太刀(ほうじゅまるこくしつさやのたち)
市文化財保護指導員 黒田 耕
武蔵御嶽神社には「宝寿丸」と呼ばれる太刀が二振収蔵されています。「宝寿」とは鎌倉時代頃より南北朝時代にかけ奥州を拠点にした刀鍛冶の集団をいいます。大きい太刀は全長が153.5cm(刀身長118.7cm)あり、一般的な太刀の倍程の長さです。金字で「宝寿丸」とある漆塗りの鞘(さや)も現存する全長は125.3cmあります。
長大な刀身は幅も広く柄元(つがもと)で4.69cmありますが、佩表(はきおもて)と佩裏(はきうら)には長さ65cmにわたる三鈷剣(さんこけん)と俱利伽羅龍(くりからりゅう)の図が彫り込まれています。龍は尾で柄を抑え、四肢はか細いながらも刃をしっかりと握り、雷を宿すが如き体は刀身に巻き付き、眼差しは切っ先を見つめつつ、鋭い口で剣先を吞(の)みこもうとしています。研磨により磨滅している箇所がありますが、江戸時代に松平定信等が編纂(へんさん)した「集古十種(しゅうこじっしゅ)」兵器・刀剣の部には鮮明な図が残されています。
「武州御嶽山文書第2巻ー金井家文書(2)ー」(市教育委員会・法政大学発行)の中の「元禄4(1691)年~正徳3(1713)年祭礼役儀帳」や「弘化2(1845)年祭礼行列仕来(しきた)り申上書(もうしあげしょ)」をみると、この宝寿丸の大太刀は「俱利伽羅」、「大くりから」と記され、赤糸(あかいと)・紫裾濃(むらさきすそご)の両大鎧と共に日の出祭礼において神輿(みこし)の御前を参進していました。史料から、龍の霊力を宿すこの大太刀が、御嶽大神の行く手を祓(はら)い清めていたことがうかがえます。
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