くらし [特集]地域防災のリーダー(1)

火災や自然災害が発生した時に、消防署と連携して消火活動や人命救助に当たる消防団。地域の安心・安全を守るため、日々訓練に取り組む消防団の役割や活動などを紹介します。

「要請があれば、365日いつでも現場に駆け付けます」と話す、市消防団団長の小澤(おざわ)雄一さん。昭和62年に市消防団に入団し、今年で入団38年目。令和6年4月からは団長に就任し、市内に19ある消防団の分団(下表)を率いています。
消防団は、消防組織法に基づいて全国の市町村に置かれています。消防団員は、他に本業を持ちながら非常勤特別職の地方公務員として活動します。消火活動や地震、風水害時の人命救助・避難誘導だけでなく、平常時から市民への訓練指導や防災知識の普及啓発などに取り組みます。令和7年3月現在、市消防団には337人が所属し、地域防災のリーダーとして、まちの安心・安全を守る重要な役割を担っています。

◇身近にある消防団

◆定期的な訓練で災害に備える
「平塚は海・山・川がそろった環境なので、津波や土砂崩れ、河川の氾濫といったあらゆる災害を想定しておく必要があります」と小澤さん。「災害発生時に自分の身は自分で守れるようシミュレーションしておくこと」「自分たちの地域は自分たちで守るという地域貢献の意識を持つこと」を、各分団に呼び掛けています。
消防団は、定期的な活動(下表)の他、分団ごとに月2回の定期訓練をしています。地域にある消火栓や資機材のチェックも欠かせません。また団員は3年に1度、市消防本部が開く普通救命講習を受けて、心肺蘇生法などを身に付けます。小澤さんは「実際に電車で傷病者に遭遇し、心肺蘇生をして命を救った団員もいるんですよ」と、日頃の訓練の大切さを話します。

◇主な活動スケジュール

◆地域に根ざした強みを生かす
「消防団員は地域の実情を把握しているので、災害発生時の安否確認がスムーズにできるのが強みです」と小澤さんは力を込めます。例えば、住宅火災や土砂崩れなどが起こった場合、「あの家は高齢の方が独りで住んでいる」「あの人と連絡が取れない」など、地域の住民だからこそ分かる情報があります。
マンパワーが必要となる現場では、消防士と協力して消火・救助活動に当たります。平成7年に起こった阪神・淡路大震災では、地元の消防団員が地域に密着した日頃の活動を生かして、倒壊した家屋などから多くの人々を救出したといわれています。過去の大規模災害時には、必ずと言っていいほど「消防団がいてくれて助かった」という声が寄せられるといいます。

◆連携して防災力を強化
「私が入団した当時は自営業や農家の方が多かったのですが、最近は会社員の方の割合が増えています」と小澤さん。令和7年3月現在では、会社員が約4割を占めています(下グラフ)。東京方面など、職場が自宅から離れた場所に勤務する方もいるので、昼間の人員確保が課題です。「平塚の消防団は、普段は分団ごとの訓練の他、南・東・西の3ブロックに分かれて訓練しています。災害発生時に人手が足りない場合は、ブロックに関係なく現場に向かい、連携して消防活動に当たります」と続けます。
また市消防本部では、消防団の活動に協力している事業所へ表示証(本紙画像)を交付する「消防団協力事業所登録制度」を設けています。消防団に所属する従業員が、事業所での勤務時間中に消防団活動必要が出た場合、積極的に配慮することなどが認定の基準です。表示証は事業所に掲示でき、現在7事業所(湘南農業協同組合・日産車体・福田無線商会・田中貴金属工業・小澤石材店・増田工業・しまむら)が協力事業所として登録されています。地元の事業所とも連携することで、課題の解消や地域防災力の強化を図っています。

◇団員の職業別割合

◆地域に必要とされる消防団に
災害発生時に備えて、地域のために活動する消防団。小澤さんは「地域に必要とされる消防団でありたいです」と思いを語ります。消防団をより身近に感じてもらえるよう、これからも消防活動に取り組んでいきたいと前を向きます。
「消防団での活動は、地域貢献だけでなく、人としての成長にもつながる学びがたくさんあります。僕らと一緒にこのまちを守りませんか」

◇車両・資機材
・車両が入れない火災現場で使う、背負い式消火水のう。水を入れたバッグを背負い、放水します。
・鉄などを切断するエンジンカッター。災害発生時の人命救助に使います。
・令和6年12月に第10分団へ配備した可搬式消防ポンプ積載車。消防車両が入れない狭い道路では、荷台にあるポンプを下ろして川などの自然水利から放水できます。
※詳細は本紙をご覧ください。