くらし 〈連載〉誠実 信頼 希望〔加藤 憲一〕

◆「チーム小田原消防」の絆

火災や災害から市民のいのちと財産を守る上で、地域社会になくてはならない存在が「消防」。小田原の消防は、市職員で編成される「小田原市消防」と、市民の立場で活動する「小田原市消防団」という大きく二つの組織で構成されます。この両者は、実際の火災や災害対応などの現場で役割分担し緊密に連携していますが、その絆をさらに強める機会がこの10月にありました。それは消防団女性分団の全国大会出場です。

近年、消防団の団員確保が全国的に課題となっている中、消防団員として活躍する女性が増えています。各地で結成されている女性消防分団などが一堂に会し消火技術を競う「第26回全国女性消防操法大会」が横浜市で開催され、そこに神奈川県代表として市消防団女性分団(愛称:「梅小町」)が出場しました。

結成10年目にして、初めての全国大会出場。小田原の場合、女性分団は火災現場での活動というよりも、平時の啓発などが主たる任務のため、実際の消火活動にまつわる訓練などはあまり行われていませんでした。大会出場が決まってからの1年近く、ある意味ゼロから消火作業(軽可搬ポンプ操法)の訓練を行うことになったのです。

不安を抱えながら開始された訓練の指導を担当したのは、市消防の若手職員たち。また数十回に及んだ訓練では、市内22の各消防分団がローテーションを組んできめ細かくサポート。真夏の酷暑の中も、雨降りの日なども、仕事や家事などをやりくりして厳しい訓練を重ねた女性分団員たちを、こうした職員たちがしっかり支えたのでした。

秋晴れの青空の下での本番。応援してきた消防関係者が見守る中、女性分団員たちは見事なチームワークで訓練の成果を発揮。緊張から解き放たれ、やりきった満足感と安堵(あんど)の中で涙を流しながら抱き合い、お互いの健闘を讃(たた)え合っていました。

後日行われた報告会では、市消防職員および消防団幹部、さらには22の消防分団長も全員参加し、それぞれが果たした役割をねぎらい、苦労話にも花が咲き、笑いも涙もあるとても素敵(すてき)な会に。この打ち解けた空気感に、男性中心で動いてきたこれまでとは異なる「絆」の芽生えを感じました。

女性分団の活躍を支えることを通じて、小田原市民を守る「チーム小田原消防」に新しい時代が訪れたと感じられた、とても嬉(うれ)しい出来事でした。