くらし 市長随想

■春の小川と鯉のぼり
市長 櫻井雅浩

春の小川は さらさら行くよ
岸のすみれや れんげの花に
(『春の小川』から引用。作詞 高野辰之)

やさしい春の名曲である。子どもの頃は2番の「えびやめだかや小ぶなのむれに」という言葉に反応していた。小川にはエビがいるのか!とタモを持って、校区外まで遠征していた。
実は63歳になった今でも透明な川の流れに小魚を追い回す夢を見る。その川は富士山の麓の柿田川のようで、水中にはバイカモの白い花さえ見えるのだ。
私は柏崎刈羽内水面漁協の組合員、30年選手のアユ漁師である。子どもの頃の夢を青年になって実現し、未だ現役である。30歳前後になった3人の息子たちも川で遊ぶ。

甍(いらか)の波と 雲の波
重なる波の 中空(なかぞら)を
橘(たちばな)かおる 朝風に
高く泳ぐや 鯉のぼり
(『鯉のぼり』から引用。作詞者 不詳)こちらは、初夏、薫風さわやかな名曲だ。健やかな子どもの成長を願うこいのぼりは立派な日本の文化だ。

子どもの頃、父が買ってくれたわが家の大きなこいのぼり。小さな裏庭で竹の棒に結びつけられたが、隣家が迫っている環境では「高く泳いでいる」姿を見たことはなかった。竹に巻き付くチクワ状態だった。
大学生になって、やはりこいのぼりは大きな空間でなけりゃ、と考え北アルプス奥穂高岳の頂上で上げたこともある。その当時、5月の上高地は雪に閉ざされていて、沢渡(さわんど)集落から14キロ、雪をかき分け、釡トンネルを通って、歩いて入ったのだった。
親となって「やはり風に泳がないと!」と家の前の屋根にポールを設置したのだが、今度は風向きが逆方向で、こいのぼりはスルメ状態で窓にへばりついていた。
ウクライナ問題が解決したら、ウクライナ国旗に代わり、国旗、市旗に加え、5月はこいのぼりを市役所前に掲げたいと思うがどうでしょうか。