健康 加茂養生訓 14(年老いては、やうやく事をはぶきて、すくなくすべし)

■ー『ACP(アドバンスケアプランニング)』の勧めー
加茂病院 富所 隆

加茂病院に赴任して1年が経ちました。長岡での40数年の医師生活も含めて、これまで、たくさんの患者さんやご家族の方と触れ合うことできました。元気に退院される方がいらっしゃる一方で、残念ながら亡くなられた方もおられます。そんな時いつも思うのは、この方の人生は幸せだったのかなということです。医師として、偶然、患者さんの人生最後の場面に立ち会わせて頂くことになったことは奇跡のような出会いと思います。病院という限られた空間で、限られた時間で目の前の患者さんに何ができるのか、この患者さんは何を望んでいるのかと考えさせられます。

自らの人生はどうだったのか、何を大切にしてきたのか、どんなことが嬉しかったのか、どんな苦労があったのか、そんなことを誰かと、親しい人と、大切な人と話しておいてみませんか。人生の最終段階で、どんな医療を受けたいのか、どんな介護を望むのか、何を大切にしてほしいのか。そんな想いを私たちに繋げて欲しいと願っています。

『ACP』とは、患者・家族・医療従事者の話し合いを通じて,自らが将来受けるであろう医療・ケアについて、その人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセスのことです。個人が希望する医療・ケアを実現することで、その人が最期まで尊厳をもって人生をまっとうすることができるよう支援することを目標としています。

日本では、2018年に『ACP』を『人生会議』と称することが決定され、厚生労働省・医師会をはじめ多くの団体がその普及を進めていますが、未だごく一部の人々にしか普及していません。自分の最期の時を想定して話し合いを持つなんて恥ずかしくてとか、そんな深刻な話なんか言い出しにくいとか、何時来るか分からない将来のことなんて決められないよ。確かにそうですよね。でも、とても大切なことだと思いませんか。この養生訓を読んで少しでも興味がわいたら、一度かかりつけの医療機関やケアマネさんに話してみてください。みんな気軽に応じてくれるはずです。