その他 鯖江でがんばる あの人の笑顔と素顔 vol.27

デフリンピックに出場するバスケットボール選手 丸山香織さん(26)
片上小学校、東陽中学校、足羽高校卒。現在は首都圏に住み、フルタイムの会社員として働きながら練習に打ち込んでいる。デフチーム「東京スクラッチガール」などに所属。
持ち味は体の強さを生かしたプレー。相手選手とのコンタクトを恐れず、果敢に攻めてシュートを狙う。趣味はキャンプと寝ること。

《聖地でつなげボールと心》
11月に日本で初めて開催される聴覚障がい者のための国際的なスポーツ大会「東京2025デフリンピック」で、バスケットボール女子日本代表チームのメンバーとして出場する。「鯖江出身の選手として出場できるのは誇り。子どもたちの憧れとなるような姿を見せて、金メダルを狙いたい」。
耳が聞こえにくくなったのは3歳頃。ただ、程度はまだ軽く、小学生のときはバレーボールに打ち込んだ。バスケットボールを始めたのは中学校の時。ほかのスポーツにも挑戦したかったのと、「顧問の先生が聴覚障がいをきちんと受け止めてくれた」のが理由だ。仲間たちの支えも忘れられない。
相手の唇の動きを読み取って話す「口話」と、天性の運動能力とを組み合わせて努力を重ねた。高校では強豪校で主力として全国大会出場にも貢献した。
高校を卒業し、社会人1年目。会社へ向かう途中のことだった。通り過ぎる救急車のサイレンがなぜかいつもより遠く、こもって聞こえる。「何か変だな」。病院に行くと、聴力の急激な低下が分かった。
そんなとき、父の友人の誘いでデフバスケの見学に行った。その時の感動は今も忘れられない。「サインやアイコンタクトでつながりながらすごいスピードで試合をしていた。こんなバスケの世界があるんだ」。胸にきらめいた一筋の希望は熱を宿して、一気に燃え上がった。「私もやってみたい」。
バスケの技術が高レベルであることは学生時代の実績が示すとおりだ。県外のチームに入って地道に練習を積み重ねると、次第に存在感を発揮。2018年に初めて日本代表になり、これまで国際大会に3回出場してきた。それでも、今度の大会は特別だ。「自国開催で多くの人に見に来てもらいやすいので競技への理解が広まる大きな機会」。ただ、出場がゴールではないとも強調する。「大切なのは共生社会を広げていくこと。選手たちは合宿費用の工面などで課題も抱えているので、プレーや講演会などを通じてデフスポーツへの理解と魅力を広めていきたい」

■丸山選手の手話講座!
◇東京
(1)両手の指で「レ」の文字を作り
(2)に2回上げる

◇デフリンピック
(1)両手の人差し指と親指で輪を作り、重ねる
(2)上下反対にしてもう一度重ねる

◇頑張るぞ
右手のこぶしを上げる