文化 ふるさとの誇り214 ○(まる)博レポート

■国指定史跡 御勅使川旧堤防(将棋頭・石積出) 石積出(いしつみだし)三番堤 最新!発掘調査レポート
有野にある石積出は御勅使川扇状地(みていがわせんじょうじ)の扇頂部(せんちょうぶ)に築かれた堤防であり、扇状地のほぼ全域を御勅使川の洪水から守っていました。現在市教育委員会では史跡の整備に向けて石積出の構造や範囲などを把握するため、令和4年度から継続的に石積出三番堤の発掘調査を行っています。今回はその最新の発掘調査成果をお伝えします。

(1)御勅使川流域で初めて「中枠(なかわく)」を発見
堤防の西側から、「中枠」とよばれる構造物が発見されました。「中枠」は堤防と平行して四基並んでおり、北側ニ基は壊れた状態で見つかりました。「中枠」とは木材で枠組みを作り、その中に石を詰めたもので、堤防の基礎の部分を洪水から守るために設置されました。「枠」は江戸時代から使用されていたと考えられていますが、堤防に使用された石の中には、ドリルを用いて割った跡がみられる石もあるため、発見された「中枠」は明治時代のものと推測されます。また、「中枠」より川側には「竹蛇籠(たけじゅかご)」も見つかっています。竹蛇籠は竹を円筒形に編んだ籠に石を詰めたもので、「中枠」を固定するために設けられたと考えられます。

(2)巨大な石を使った根石(ねいし)を発見
堤防の先端部から南へ続く小段は堤防の中ほどで無くなり、その地点から石積の造りが変わっていることが確認されました。この箇所では長さ一メートルを超える巨石を用いた根石(石垣や石積で一番下の列に置かれる石)が使われており、その下からは木材の痕跡とみられる空洞も見つかっています。これは根石が偏って沈まないよう、丸太を梯子(はしご)状に組み根石の下に敷いた「梯子土台」が用いられていたと考えられます。また、堤防南側と先端部とでは堤防基礎の深さに違いがみられました。これによって河川に対し山側が高い地形に合わせて、堤防が築かれたことが初めて明らかになりました。

(3)堤防内部のようす
堤防の内部を数箇所にわたって初めて調査した結果、馬踏(まふみ)付近では径約三十センチの石が積まれ、御勅使川に面する西側にはその上に径約十センチの石が積まれていました。さらにその上には馬踏を調整するために、径約五センチの石を含む砂利層が見つかりました。
これらの調査結果から、堤防はその部位によって石の大きさを使い分けて築かれていたことが初めて明らかになりました。

このように今回の調査によって、石積出三番堤では多くの新たな発見が得られました。かつて石積出三番堤は土砂に埋まり、石積が見えない状態でしたが、10年以上続く、市内小学4年生の清掃体験により本来の石積が姿を現し、その成果が今回の発掘調査に繋がっています。
今後はさらに調査を進めるとともに、得られた成果を教育普及活動も含め広く発信していきたいと思います。
文・写真:文化財課

石積出については広報南アルプス2024年7月号「ふるさとの誇り204」など過去に紹介をしています。また「文化財Mなび」や「南アルプス市ふるさとメール」などでも紹介をしています。本紙QRコードから是非ご覧ください。

詳細は本紙をご覧ください。