くらし 「輝く恵那人」243人目

■健康は歯から口から 笑顔から歯と口の健康伝道師として
阿部歯科の開業医で、12年にわたり(公社)岐阜県歯科医師会の会長を務める阿部義和さん。県民の歯と口の健康を守り、健康寿命を延ばすため日々尽力している。
医療皆保険制度が整備され、誰でも医療を受けられるようになった昭和30年代。人口増加に加え、戦後の食生活の変化から砂糖の消費が急増。虫歯患者が急増し歯科医不足が社会問題になっていた。
そのような背景から阿部さんは、高校卒業後、愛知学院大学の歯学部へ進学。「厳しかった」と振り返る学生生活は、実習や深夜まで大学で勉強に励む日々を過ごした。
卒業後は同大学で助手として研究と教育に携わり、29歳の頃、故郷の明智町で阿部歯科を開業。予約はすぐ埋まり正月も急患対応に追われる忙しい日々を過ごした。その傍ら、子どもの虫歯予防に力を入れ、明智町役場保健センターで歯科指導を行うなど、地域に根ざした活動を続けてきた。
64歳で同会の会長に就任。地域ごとにやり方が異なっていた「ぎふ・さわやか口腔健診」の統一化と健診結果のデータ化に尽力し、昨年4月には県内全ての歯科で受診できる「オーラルフレイル健診」を開始。前年月比で受診率を向上させることに成功した。
同会の他、70代で(公社)日本歯科医師会の副議長・議長も歴任。「県内での東濃地域、全国での岐阜県は認知度が低く医師も少ないが、地方の歯科医療の現状や自分の意見を広く伝えてきた。田舎の意地のようなもの」と、活力の根底にある思いを笑顔で語る。
本年6月で会長を退任する阿部さん。「今後はより自由に、歯と口の健康伝道師として活動したい。健康は一人のものではなく、家族そして社会にも影響を及ぼす。健康寿命を延ばすには口の健康が重要だと広く伝えていきたい」と、これからも正しい歯科知識を広めるために活動していく。

◆阿部義和(よしかず)さん(76歳)(明智町駅前町)
□プロフィル
阿部歯科(明智町)の開業医で県歯科医師会の会長。趣味は読書で新書を開くときの匂いが好き。お薦めの本は司馬遼太郎の『坂の上の雲』や、ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモサピエンス全史』。最近は書斎に本が入りきらなくなり整理に困っているとほほ笑む。