健康 私のカルテ No450

■その胸の痛み、実は冠微小循環障害(かんびしょうじゅんかんしょうがい)(CMD)かもしれません
津島市民病院 循環器内科医師
長尾紗祈(ながおさき)

◇冠微小循環障害とは?
冠微小循環障害(CMD)は、心臓に血液と栄養を届ける、とても細い血管(微小血管)に起こる病気です。私たちの心臓は、冠動脈という血管から酸素や栄養を受け取って動いています。大きな血管が詰まる病気(心筋梗塞など)はよく知られていますが、CMDでは目に見えないほど小さな血管の流れが悪くなることで、胸の痛みや息切れなどの症状が起こります。

◇症状は?
CMDでは、狭心症のように胸が締め付けられるように痛んだり、胸がチクチク・ズキズキしたり、疲れやすくなったりすることがあります。また、ストレスや寒さで悪化することもあります。
安静にしていても症状が出ることがあります。また、普通の検査では異常が見つからないため、「異常なし」と言われてしまうことも多く、つらさが理解されにくいのが特徴です。

◇検査方法は?
CMDは、普通の心臓の検査(心電図や冠動脈造影など)ではわかりにくい病気です。そこで、カテーテル検査で行う血流測定(冠血流予備能検査)や、心筋シンチグラフィなどで血流を評価し、心臓へ流れる血液の量が十分でないとわかれば、CMDと診断できます。当院でも検査を行っています。

◇治療法は?
CMDの治療の目的は、「血流をよくして症状を和らげること」と「心臓の病気を予防すること」です。心臓の血管を広げたり負担を減らしたりする薬のほか、心臓の病気の原因となる高血圧や脂質異常症を改善させる薬を組み合わせることもあります。
CMDは生活習慣とも深く関わっています。禁煙(タバコは動脈硬化の強いリスクです)や、バランスのとれた食事、適度な運動、ストレス軽減など、日々の生活の改善も症状改善にとても役立ちます。心大血管リハビリテーションを行い、症状の改善を認めることもあります。
CMDは「すぐに命にかかわる病気」ではありませんが、放っておくと将来的に心不全や心筋梗塞などのリスクが高まることがあります。また、胸の痛みや不安感が続くことで、日常生活の質(Quolity Of Life:QOL)が下がってしまうこともあります。そういったことがないよう、治療を行っていく必要があります。

◇さいごに
「検査では異常がないと言われたのに、つらい胸の症状が続く」「なんともないと言われたが、症状があり、理解してもらえない」と感じている方は、この病気が原因の可能性もあります。専門的な診断と、体と心の両方に向き合った治療が必要です。
不安なことや症状について話すことも、回復への第一歩です。安心して医師に相談してみてくださいね。