文化 じもと再発見 なばりじまん

■名張の竹が歴史をつなぐ 唐招提寺「うちわまき」
奈良時代に鑑真が創建した唐招提寺(とうしょうだいじ)(奈良市)の「うちわまき」と呼ばれる伝統行事をご存じでしょうか。唐招提寺の中興(ちゅうこう)の祖と仰がれる覚盛上人(かくじょうしょうにん)(鎌倉時代)が、蚊をたたいて殺そうとした弟子を戒めたという言い伝えを受け、その徳をたたえるために蚊を払ううちわを供えたのが始まり。命日の5月19日に執り行われるこの行事で使われるのが「宝扇(ほうせん)」と呼ばれるうちわで、持ち手には名張の女竹(めだけ)が使われています。
近年、この女竹が不足。このことを、滝之原出身の第88世唐招提寺長老(僧侶の最高位)であった西山明彦(みょうげん)さんから聞いた比奈知地域の人たちが「新たなまちおこし」として、平成23年に「唐招提寺に竹を送る会」を発足。以来、毎年女竹を奉納しています。会の皆さんは、毎年1月に直径1cmほどの女竹を刈り取り、長さを3.5m〜4mほどに切りそろえ、25本の束に。奉納された竹は、油抜きなどを行ったあと、翌年の行事に使用されます。
唐招提寺所蔵の塼仏(せんぶつ)(仏像のレリーフ)と夏見廃寺で出土した塼仏が同じ型からつくられたものであるなど、古都奈良と名張は、実は、さまざまな縁でつながってきたのです。

■伝統行事に貢献できていることが誇りであり、生きがいです
女竹の奉納は今年で15年目。毎年1,000本を目標にしていて、今年は1,670本を奉納しました。現在「唐招提寺に竹を送る会」の会員は100人を超えましたが、多くの人の支えがあってこその活動となっています。
唐招提寺にも喜んでいただいていますし、何より、歴史ある行事を支えることができて誇りを感じます。「うちわまき」が名張を知ってもらうきっかけになりますしね。それに、元気でこの活動を続けられていることが生きがいにもなっています。しかし、会員が高齢化してきて、70~80歳代が中心となっていますので、今後は、若い人にも関わってもらって、絶やすことなく引き継いでいきたいですね。
▽語るひと
唐招提寺に竹を送る会 会長
奥西勲さん