くらし [続]尾鷲の植物誌

■ひっつきむし
草むらを歩くとたくさんの草の実がついてくる季節となりました。これらの実はまとめて「ひっつきむし」と呼ばれたりしています。道端でよく見かけるやりのような実をつけたコセンダングサ(キク科)、空き地で大きめの葉を広げてとげのある実をつけているオオオナモミ(キク科)等、いろいろな形をしたひっつきむしが見られます。
植物は動物のように動くことができないので、住み場所を広げるには動く物を利用して移動しています。それが風であったり、水であったり、動物だったりします。ひっつきむしたちは、人も含めた動物にくっついて別な場所に移動しています。
彼らの実を虫眼鏡で拡大すると、くっつくための巧妙なつくりが見え、感心してしまいます。前に挙げたコセンダングサの実は1.5cm前後の棒状で、先端に2~3本のとげがついています。このとげに細かい逆さとげがついていて、刺さると抜けないようなつくりとなっています。一方オオオナモミの実についているとげは、その先端がかぎ状に曲がっていて動物の毛や衣服の繊維に引っかかるようになっています。このしくみからヒントを得て発明されたのが面ファスナー(マジックテープ)です。1940年代後半のことでした。