文化 伊賀の歴史余話 44

■柘植駅のランプ小屋と駅前の発展
柘植町にあるJR柘植駅は、明治23(1890)年に開業した県内最古の鉄道駅です。明治21(1888)年に四日市市で設立された関西鉄道株式会社が、草津・柘植間に鉄道を敷設(ふせつ)したことによってできた駅で、駅舎は開業前年の2月に竣工(しゅんこう)しました。
電気照明が普及していなかった当時、駅のホームや待合室にはランプが揺れ、レトロな雰囲気が漂っていたそうです。その後、駅舎は増改築が繰り返されますが、現在も駅舎西側に開業当時の建物である危険品庫(油庫)が残されています。危険品庫は、ランプやその燃料などを保管・収納するために造られたもので「ランプ小屋」とも呼ばれています。
ランプ小屋には、耐火を目的とした赤レンガが使用され、壁の表面に鮮やかな図柄が現れる「フランス積み」と呼ばれる技法が用いられています。
蒸気機関車が吐く煙で火事が起こるなどの風説があり、柘植駅をはじめ、この頃の駅や線路は人里から離れた郊外に設置されました。
しかし、鉄道の重要性が増すと、駅周辺に変化が見られるようになります。柘植駅でも乗降客を相手に草鞋(わらじ)や駄菓子を販売するものが現れ、数軒の旅館が営業を始めます。さらには貨物を扱う運送店が軒を連ね、駅前は活況を呈するようになりました。
ランプ小屋は、閑散とした場所が駅の設置によって新たなにぎわいが生まれ、町場へと発展する近代化の様子を見てきた、貴重な鉄道遺産です。

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