くらし 2026新春トーク(1)
- 1/13
- 次の記事
- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県
- 広報紙名 : 滋賀プラスワン 令和8年冬号 vol.214
■心身ともに健やかな1年を!
学び・健康から考える滋賀県の未来
滋賀県出身者として初のノーベル生理学・医学賞を受賞された坂口志文(さかふちしもん)さん。三日月知事とともに、故郷への想い、そして学びや健康の未来について語っていただきました。
・大阪大学特別栄誉教授 坂口 志文(さかぐちしもん)さん
1951年長浜市生まれ。県立長浜北高校、京都大学医学部卒業。1995年に「制御性T細胞」の存在と免疫学的重要性を世界で初めて証明。2025年ノーベル生理学・医学賞を受賞。
坂口さんが日々研究を行っている大阪大学でお話を伺いました。
●まずは故郷・長浜への思いを伺いました
坂口:私は長浜の出身で、歩いて10分ほどで姉川へ行けるような自然豊かな環境で育ちました。長浜は歴史的には長浜城や小谷城もあり、自然と歴史に恵まれた面白い土地だと思います。
知事:姉川や高時川といった長浜を流れる河川は、人々に恵みをもたらすだけでなく、アユをはじめとする生態系にとっても重要です。しかし近年は気候変動や水温の影響でアユの数が減るなど課題もあり、放流方法の見直しなど対策を進めています。先生が子ども時代に過ごされた豊かな自然環境を、これからも守っていきたいですね。
また、長浜を含む県北部地域(長浜市、高島市、米原市)は、県内でも特に人口減少や高齢化が進んでいる地域であり、ある意味では課題先進地域として、重点的に地域振興に取り組んでいます。北部地域の高校生の皆さんと魅力ある地域づくりについて考える北の近江振興高校生サミットを毎年開催するなど、新しい地域づくりを進めているところです。
坂口:長浜では黒壁スクエアができたり、まちおこしにより観光客が増え変化がある一方で、子ども歌舞伎などの伝統文化は今も受け継がれていますね。変わる部分と変わらない部分、どちらも大切にしながら、地域ならではの文化がこれからも残っていってほしいと思います。
●「面白い」という気持ちが研究の出発点に
坂口:私が気づけば50年以上も研究の道に没頭してこられたのは、自分を守るべき免疫が自分を攻撃することもあるという二律背反的なところに惹かれ、その興味を持ち続けられたことが大きかったと思います。勉強に限らず、自分が面白いと感じたものを続けることで新しい視点が見えてくるものです。変化の早い時代ですが、興味を持ち続けるということが今の時代も重要だと思います。
知事:「面白い」と思う気持ちはすべての出発点です。自然の中での遊びや交流など、子ども時代の体験は勉学にも社会で生きていく力にもつながります。県では、子どもたちが多様な体験をする機会をつくるため、民間団体や企業等と連携し、公園や博物館等を活用して体験活動の充実に力を入れています。
●多様な学びで子どもたちの選択が広がる
知事:坂口さんは高校まで滋賀で過ごされたのですよね。高校時代は興味のあることを伸ばしていく時期です。県立高校では各々の高校の魅力や特色を高める取組を進めていて、伊香(いか)高校には「森の探究科」、守山北高校には「みらい共創科」という新学科が誕生しています。興味のあることに挑戦したいと思う子どもたちを後押しできたらと思います。
坂口:選択肢が広がることは重要だと思います。かつて日本は学歴社会といわれましたが、これからは多様な職業を経験したり、学び直したりと、様々な生き方が可能になる時代です。高校にいろいろな形があるのは重要なことですね。
知事:県でも多様な学びを大事にしています。例えば、教室に入りづらい子どもが安心して過ごせる教室外の居場所づくりによって学びの機会を確保する取組を進めています。また、県内初の高等専門学校を2028年に開校する予定です。知識と実践力を備えた知行合一のエンジニアを滋賀から輩出できたらと思います。
坂口:高専生がロボットのコンクールなどで楽しみながら技術を習得されている姿をテレビで目にします。あのような学びの場があるのは面白いですね。そこからさらに専門性を深めたくなれば大学に進学されるもよし、多様な可能性を選択できることが重要だと思います。
知事:子どもたちが本来持つ興味や関心を引き出すために、先生方との対話や、地域・社会との交流の場をつくっていけたらと思います。実は、私は高校時代に英語教師だった坂口さんのお兄さんの教えを受けたことがあります。その際に日本学者のドナルド・キーンさんのことを教わり、日本文化を外から見る視点を知って新鮮だったのを覚えています。そうした学びの視野を広げる機会を今後も増やしていきたいですね。
●坂口さんが続けてこられた研究とは
坂口:これまで免疫学では、免疫反応をいかに高めるかという点に重きが置かれてきました。私が研究してきたのは、その逆で「免疫反応を起こさないようにする」仕組みです。現在では世界的にも制御性T細胞によって、様々な病気が治せないかという研究が盛んに進んでいます。そういった流れの中で、少しでも早く実際の患者さんに、有効な治療法・予防法が届くことを願っております。
知事:免疫反応を抑えることで病気の治療や予防につながるというお話は、多くの患者さんにとって大きな希望だと思います。坂口さんの研究成果が新たな治療法や予防法として実を結ぶことを期待するとともに、「坂口さんのようになりたい」と志す若い研究者が滋賀から生まれることも願っています。
